確認!そばに海がある人向け 津波・高潮・高波対策


画像:PIXTA

海の近くに住んでいると、津波や台風、低気圧による高波、高潮などを原因とした災害に遭うリスクがあります。こうした「海の災害」の多くは、実は事前に発生が予想できるので、自分や身近な人の命を守るために、日ごろから防災意識を持って備えておくことが重要になります。

今回は海の近くで注意すべき災害と防災の方法を紹介しましょう。

海の近くに住んでいる人が注意すべき3つの災害

海の近くに住んでいて注意が必要な災害は、津波と高潮、高波の3つです。

 

いずれの災害でも海水が防波堤などを越え、家屋が浸水したり、倒壊してしまったりする危険があります。もちろん、事前に対策を立てることはできます。まずは、自宅や職場のある場所が、浸水が想定されるエリアになっているかどうかをハザードマップで確認してみましょう。

ハザードマップで海の近くの災害リスクを確認してみよう

ここでは国土交通省がインターネットで公開している「重ねるハザードマップ」(https://disaportal.gsi.go.jp/maps/)の見方を紹介していきます。

 

・高潮、高波

はじめに、高潮、高波に関したリスクを調べたい場合は、ハザードマップの「災害種別」で「高潮」を選択します。画面の上方に検索窓があるので調べたい住所を入力します。
下に掲載したのは、例として検索した「(兵庫県)西宮市」のマップです(2021年1月現在)。

 

表示例①

・津波

津波の場合は「災害種別」で「津波」を選択します。先ほどと同様、上方の検索窓に調べたい住所を入力します。

下は「(三重県)桑名市」で検索した場合のマップです(2021年1月現在)。

 

表示例②

西宮と桑名を例に挙げましたが、いずれのマップも、色がついているところが「浸水想定エリア」になります。色ごとに予想される浸水の深さが示されています。

 

凡例は、画面左上の「選択中の情報」の「すべての情報から選択」の「+」をクリックし、「災害リスク情報」から「津波」の右端にある「解説」を選ぶと、出てきます。

・事前通行規制区間

暴風や強風、高波が予想される場合、事前に道路が通行止めになるケースもあります。こうした「事前通行規制区間」もハザードマップで確認できます。「災害種別」で「道路防災情報」を選択して、住所を検索すると、赤いラインで表示されます。

もし、避難所に向かう道中に「事前通行規制区間」がある場合、早めに避難をしましょう。

 

表示例③

津波災害

日本では津波による災害が、数年から十数年に1度の割合で起きています。大きな津波は甚大な被害をもたらしますが、他の災害に比べると頻度が少なく、まさに「忘れた頃にやってくる」災害です。津波が起きる原因や注意が必要なポイントを紹介しましょう。

 

参照;文部科学省 地震調査研究推進本部「日本における被害地震の発生頻度に関する統計的分析について」
https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/higaijishin0601.pdf

津波が起こる原因と想定される被害

津波は、海底で起きた地震による地殻変動が原因で発生します。地震で海底が動き、その付近の海水が大きな塊となって移動、海岸にも押し寄せます。通常の波よりもはるかにエネルギーが大きく、家や車も巻き込んで、被害も大きくなります。

 

地震は発生と同時に被害が出ますが、津波の場合、海水が陸に達して被害が出るまでにはタイムラグがあります。命を守るためには、このタイムラグを十分に生かす必要があります。

 

そこで、ハザードマップで津波の浸水想定エリアを調べておいて、実際に津波がやってくることが分かった場合、この浸水想定エリアから直ちに離れられるようにしておくことが重要になります。あわせて、普段から津波発生時の避難のシミュレーションや避難場所の確認をしておきましょう。

津波で特に注意すべきポイント

津波は大地震に伴って発生するため、津波の警報の前に地震情報が流れます。また、津波は震源が海底の場合に発生します。震源から自分のいる場所が近いほど、津波の到達は早くなります。

 

陸地に到達して災害をもたらす津波は、震源が浅い地震が多く、マグニチュードが7を超えると発生する恐れも高まります。

話を総合すると、地震情報が流れた際に、震源が自分のいるところから近い「海底」で、マグニチュードが「6」を超えていたら、津波の発生に十分に注意してください。

津波の発生や被害が想定される場合、以下の津波警報・注意報が発表されます。

なお、津波は何度も繰り返し襲ってきます。津波警報や注意報が解除されて安全の確保ができるまでは、海に近づかないでください。

高潮災害

日本の高潮被害は、5~10年に1回くらいの割合で起こっています。記憶に新しいところでは、2018年に発生した台風21号による大阪湾の高潮被害があります。このときは海沿いで浸水被害が発生し、想定を超える高潮によって関西国際空港も水につかりました。

 

高潮は発生頻度が高く、大規模な高潮になると家屋の浸水だけでなく命の危険にさらされることもあります。高潮が起こる原因と想定される被害、注意すべきポイントを紹介します。

高潮が起こる原因と想定される被害

高潮が起こる原因は主に以下の2つです。

 

①台風や低気圧で気圧が下がることによる吸い上げ効果

気圧が1hPa(ヘクトパスカル)下がると、潮位が1cm上がります。例えば1000hPaの気圧が970hPaに下がると、潮位は30cm上がることになります。

 

②台風や低気圧で強い風が海岸に向かって吹く吹き寄せ効果

強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海岸に吹き寄せられた海岸付近の潮位が上がります。

 

高潮による被害としては、溺れて亡くなったり、漂流物などにあたってケガをしたりする人的被害があげられます。家屋の浸水、浸水による電気製品の障害などの家屋被害もあります。道路冠水による交通障害なども想定されます。

高潮で特に注意すべきポイント

潮位の変動が大きい大潮と満潮が重なるタイミングに、台風・低気圧が接近すると、高潮の被害が特に大きくなります。

このとき風向きが海から陸に向かっていると、吹き寄せ効果によってさらに潮位が上がります。

このように高潮被害は、大潮・満潮・風向に影響を受けるため、台風や低気圧の接近時にこの3つの要素が重なるときは特に注意してください。高潮警報が発令されたら、直ちに避難しましょう。

高波災害

高波災害は、発達した台風や低気圧などによって頻繁に起きています。被害の多くはヨットやサーフィンといったマリンレジャーで、人が高波にさらわれるケースなどですが、越波によって家屋が浸水したり、走行中の車が流されたりする被害も起きています。高波が起こる原因と、想定される被害を紹介しましょう。

高波が起こる原因と想定される被害

高波は、台風や低気圧の強風・暴風が原因となって発生します。高波には、付近の風を巻き込んだ「風浪」と、台風や低気圧の近くで発生した波が遠くに伝播する「うねり」の2種類があります。

 

越波や家屋の浸水につながるような高波は、多くが風浪とうねりの2つの波が合わさって起こります。この場合は、事前に悪天が予想されていて、波浪警報も発令されるケースが多いので、警報を確認して、早めに避難すれば、被害を最小限に抑えられます。

 

一方、遠くの台風や低気圧が原因で発生するうねりによる高波は、晴れていて波が穏やかな日にも発生します。波浪注意報や波浪警報が出ているときは、風が弱くても海に近づかないようにしてください。

高波で特に注意すべきポイント

高波で特に注意すべきポイントは、高潮と重なり合うとより大きな災害につながることです。潮位が高くなっているところに高波が押し寄せると、さらに大きな波となって海沿いに浸水被害をもたらします。

 

特に海から陸に向かって強風が吹き、高波が海岸に打ち寄せ続けるような状況だと、押し寄せた海水がなかなか沖に戻ることができなくなって、さらに海岸付近の潮位を高める、という現象が起きます。

 

波浪注意報や波浪警報に加え、高潮注意報や高潮警報が発令されているときは、より一層の警戒が必要です。

海水による災害リスクを把握し、防災の準備をしましょう

まとめてみると、海の近くに住んでいる人が注意すべき災害は、大地震によって発生する津波、さらに台風や低気圧の接近で発生する高潮と高波です。

 

自分の住んでいる場所に、どれくらいの災害リスクがあるかは、ハザードマップの浸水想定エリアや事前通行規制などで分かるので、事前の十分な確認が不可欠です。

 

災害が発生したら「どこに逃げるか?」「どうやって避難するか?」なども家族で事前に話し合い、災害に備えましょう。

 

<執筆者プロフィル>

田頭 孝志(たがしらたかし)

防災アドバイザー/気象予報士 田頭気象予報士事務所

愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数 ・防災マニュアルの作成に参画。

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