3.11陸前高田の震災ガイドが語る「震災と復興」のいま

2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年。津波により大きな被害を受けた岩手県陸前高田市では、震災の恐ろしさや復興への想(おも)いを伝える「震災ガイド」が2011年から活動を続けています。陸前高田観光ガイド部会・会長の河野正義(こうの まさよし)さんに震災と復興のいまを聞きました。

(画像提供:一般社団法人 陸前高田市観光物産協会)

東日本大震災により陸前高田の多くの人が犠牲に

陸前高田市は岩手県沿岸の最南端にあり、漁業が盛んな地域です。風光明媚(めいび)な景色が自慢で、市内の高田松原は日本百景に選ばれている美しいところです。

高田松原の背後には広い平地が広がっていて、そこに町の中心部がありました。田舎町なので普段は治安も良くて静か。夏になると七夕まつりが行われ、とても盛り上がります。

(画像提供:一般社団法人 陸前高田市観光物産協会)

しかし、2011年3月11日に津波による大きな被害を受けました。

陸前高田は震度6弱でしたが、地震そのものによる被害は町が壊滅するほどではありませんでした。ですがそのあとの大津波の被害が甚大で、特に町の中心部と隣の気仙町今泉地区は壊滅してしまいました。8千数百あった建物は3,000以上が全壊し、私の自宅も津波により流されました。

命は助かっても家族や知り合いが犠牲…

震災前に24,000人ほどだった陸前高田市の人口は、震災によって1,800人ほどが犠牲となりました。たとえ自分が助かっても、家族や親戚・友人に犠牲者が出なかったという人はいないのではというほどです。私自身も姉が今でも行方不明で、数えきれないくらいの親戚や友人が犠牲となっています。

 

私はありがたいことに助かることができました。せっかく命が助かったのだから、何か自分にできることがないかと考えていたところ、2012年10月ごろ地元の新聞で震災ガイドという活動を知り、チャレンジすることにしたのです。

「奇跡の一本松」の存在

陸前高田は比較的多くの震災遺構がある地域です。私が実施しているガイドツアーでは、「高田松原津波復興祈念公園」の範囲にある5か所の遺構(※)などを案内しながらお話をしています(※「タピック45(旧道の駅高田松原)」「気仙中学校」「奇跡の一本松」「陸前高田ユースホステル」「下宿定住促進住宅」)。

 

その中のひとつに「奇跡の一本松」があります。高田松原は平地の田んぼを潮風や砂から守るために約350年前から植林が始まった場所で、砂浜沿いに約7万本もの松の木が茂っていました。

(画像提供:一般社団法人 陸前高田市観光物産協会)

しかし、東日本大震災の大津波でほとんど全滅してしまいました。7万本のうち1本だけ立った状態で残ったのが「奇跡の一本松」です。

 

この1本も震災直後は生きていたのですが、海水のダメージにより1年足らずで枯れてしまいました。現存するのは、幹の部分の中をくり抜いて芯を入れ、同じ位置に同じ形で立てられたものです。津波の恐ろしさをいつまでも語り伝えるためのモニュメントとして残しています。

東日本大震災から10年……復興は終わっていない

東日本大震災から10年がたとうとしています。復興工事は進んでいるものの、まだ完全には終わっていません。

 

よく東日本大震災と比較される、阪神・淡路大震災も大変な震災でした。しかし大きな違いは、津波の被害です。陸前高田では地震そのものよりも津波の被害が大きかったため、被災したほかの市町村と比べても大規模なかさ上げ工事が必要となっています。地形によってかさ上げの高さは変わりますし、最大で10メートルほどかさ上げをしている場所もありますので復興に時間がかかっているのです。

「心の防潮堤」を意識してほしい

ガイドツアーで必ずお伝えすることがあります。それは、陸前高田では指定された避難所に避難したにもかかわらず、津波に襲われ亡くなった人が多いということです。

2014(平成26)年に陸前高田市が発行した「陸前高田市東日本大震災検証報告書」にも「避難所に逃げたら終わりではない」と教訓が記載されているのですが、地域で指定されていた避難所67か所のうち、38か所が被災してしまったという報告があります。そのうち9か所で推定303~411人が命を失ったとされています。

陸前高田全体の犠牲者約1,800人のうち約400人が避難所で犠牲になっていることには心が痛みます。想定していたよりも高く津波が来てしまったということなのです。

 

そのため、「避難所に逃げても終わりではない」ことを意識しなければなりません。

 

私はいつも、ガイドツアーに参加してくださった方に「心の防潮堤」という言葉をお伝えしています。

現在、陸前高田では復興のための工事が行われています。高い防潮堤もできているし、大規模なかさ上げ工事も行われており、以前よりも津波に対して安全な環境になっているとは思います。しかし、それでも私たちの想定を超える津波が来る可能性があります。たとえ想定通りだったとしても、防潮堤やかさ上げで津波を完全に防ぐことはできません。

 

津波があったら、まずは高台へ逃げることが大切です。津波に限らずさまざまな災害がありますが、いざという時にどのように行動すべきかを普段から考えておいてほしい、これこそが「心の防潮堤」だということを常にお伝えしています。

 

<取材協力>

一般社団法人 陸前高田市観光物産協会

 

<執筆者プロフィル>

松本果歩

フリーランスライター

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