写真説明:熊本地震で倒壊した熊本県益城町の住宅街(2016年4月17日撮影)
確定申告のシーズンを迎えています。風水害や地震などで自宅などが大きな被害を受けたとき、確定申告すれば所得税(復興特別所得税を含む)が減免される仕組みがあるのをご存じですか。給与所得者の場合、確定申告になじみがない人も多いと思いますが、申告しない限り減免はありません。どういう場合に所得税が減免されるのか、上下2回に分けて紹介します。〈上〉では「住宅」について取り上げます。
災害にかかわらず一定要件で誰でも対象
被災者の救済制度は地震、風水害など災害の種類にかかわらず、一定の要件を満たせば誰でも対象となります。ところが、確定申告をしなければ、被災する前に天引きされた所得税は1円も戻ってきません。
しかし、制度があるのを知っていながら誤解により申告を見送る人も少なくありません。「申告が面倒なわりに、いくらも戻ってこない」「義援金や親戚から見舞金をもらっており、申告すればその分追加で課税される」「罹災(りさい)証明書がないので受け付けてもらえない」などはいずれも誤解です。
給与所得者で確定申告をするのは、①年収2000万円超②勤め先の給料以外に年間20万円超の副収入があった③医療や寄付控除に該当する――など限られていますから、税務署にハードルの高さを感じても無理はありません。しかし、最近は風水害の激甚化が進み、地震はどこでいつ起きてもおかしくありません。次項から制度の仕組みを見ていきましょう。
被災者の所得税を減免する2つの制度
「雑損控除」と「災害減免法」
被災者の所得税を減免する仕組みには、「雑損(ざつそん)控除」と「災害減免法」の2つがあります。どちらも確定申告が必要ですが、救済の仕組みや条件、減免額の計算方法などは異なります。両方を同時に受けることはできず、確定申告をするとき、自分でどちらを申告するか選ぶ必要があります。
●雑損控除
・被災して住宅や家財、通勤や通学に使う自家用車などに損害(損失)があった場合、損害額(損失額)などに応じて「所得控除」を行い、所得税を減免する仕組みです。
・住宅、家財、衣類、現金などの損害のほか、「災害に関連するやむを得ない支出(災害関連支出)」も減免の対象になります。傷んだ屋根を覆うためのブルーシートの購入費などです。
・激甚災害指定の有無や、被災地に居住しているかなどに関係なく受けることができます。
・年間所得額の上限などはありません。
●災害減免法による税の減免
・被災した年の所得が1000万円以下で、住宅または家財の損害額が、住宅や家財の時価の2分の1以上に達した場合に、被災した年の所得税額を全額または一定割合免除する仕組みです。
年間所得が500万円以下なら所得税はゼロ
年間所得が500万円超~750万円以下なら所得税は2分の1
年間所得が750万円超~1000万円以下なら所得税は4分の1免除
どちらが有利なのか
まず自分の年収を見ていきます。
申告する年(前年)の所得が1000万円を超えている被災者は、被害がどれほど大きくても雑損控除しか選択できません。所得が1000万円以下ならどちらかを選ぶわけですが、一般的に税の減免額は、税額から減免分を直接差し引く税額控除の方が、所得控除よりも大きくなるといわれています。
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