被災したら確定申告!保存版「災害と税金」〈下〉

写真説明:熊本地震では多くの住宅が倒壊した(2016年4月17日)

「災害と税金」〈上〉で被災者に対する2つの所得税減免制度と「住宅」に関する損害額の算出について説明しました。〈下〉では、家財について細かくみていきます。雑損控除の仕組み、遠方にあるお墓、家財、車の損害額算定方法、手続きに必要な書類など。災害で大きな被害をこうむった場合、最大3年間繰り越して申告できます。該当する場合は、ぜひ確定申告をしてみてください。

生活再建を幅広く後押しする雑損控除

何が「雑損控除」の対象になるのか

雑損控除は住宅以外の資産の損害や、修理費などの災害関連支出も対象にしています。門やブロック塀の修復費のほか、雨漏りを防ぐためのブルーシートの購入費、傷んだ家具を運び出したり解体したりした費用、地震による液状化や地割れで軟弱になった地盤を修復した場合なども災害関連支出とみなされます。

遠方にあるお墓の修理で「原則3割控除」

写真説明:北海道胆振東部地震で倒れた墓石(札幌市内の霊園で、2018年9月)

お墓が地震などで倒れた場合の修復費、倒れた墓石の除去費用や墓石代、元に戻すのにかかった費用も、原則30%が雑損控除の対象になります。首都圏の居住者が、地震で遠方にある先祖代々のお墓が倒れ、修復費をかけて元に戻した場合、居住地の税務署に雑損控除の申告をすればよいのです。

なぜ「原則30%」なのかは、〈上〉で説明した住宅の修理費と同様です。控除の対象は「元通りにするのに必要な費用」のため、元通りにする以上にかかった費用は対象になりません。

 

水浸しになった家から家具を運び出し、置く場所がないので、新たにアパートを借りて倉庫代わりにしたという場合、家賃までは災害関連支出とは認められない可能性が高いです。

 

ただし、ブロック塀の場合、従前から地震に強いものにすることが求められており、造り直せばブロック塀より立派なものになります。合理的な理由があり、きちんと説明できる場合は、30%以上災害関連支出として認められる可能性があります。こうした支出は罹災(りさい)証明書では証明できないので、申告の際は必ず工事費の領収証などの添付をしましょう。

家財に関係しない水やカセットコンロは対象外

災害関連の支出でも、断水中のミネラルウォーター代や、ガスが復旧するまでのカセットコンロ代など、住宅や家財に関係しない支出は雑損控除の対象になりません。住宅や家財に関係する支出でも、生活再建に不可欠でなければ対象外です。別荘は損害額も修理費も控除の対象にはならず、1点30万円を超える書画骨董(こっとう)や掛け軸も、同じ理由で控除の対象外です。

◆雑損控除の対象になる例、ならない例

家財も損害額を自分で計算する

住宅以外の家財や車などの損害額は、罹災証明書に記されません。
テレビ、たんす、冷蔵庫など一つひとつの価値の減少分を計算して時価を出し、足し上げていくのが原則です。この家財ごとの取得価格や、買ってからの使用年数を調べるのが難しいのです。

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