大災害の備え 個人でできるポイントを専門家に聞く


画像:PIXTA

東日本大震災から10年。南海トラフや首都直下地震などが、30年以内に高い確率で発生すると言われています。くらしのなかでどう備えたらいいのでしょうか。これからの防災の在り方を研究している花崎哲司(はなざき さとし)さんに尋ねました。

想定を超えるから「災害」です

――南海トラフも首都直下地震も、今後30年に起きる確率が高いと言われています。この数字はどういうふうに考えればいいですか。

 

確率論では今起こってもおかしくない。しかも、交通事故で亡くなる確率よりはるかに高い。温暖化や熱帯化、海水面の上昇など、地球環境はここ数百年で経験したことのないスピードで変化しています。気象観測が始まって100年余りのデータでは、予測不可能なことが続いています。

巨大地震も、地球にしてみればくしゃみ程度のことではないでしょうか。想定通りにやってくる災害はありません。想定していた数値を超えるから「災害になる」ことを忘れてはなりません。

 

大切なのは「人に頼らない防災」です。自分の命を人任せにせず、無理なく日常生活の延長でできる防災を意識していくことです。自分の住む地域の災害特性、災害の情報に敏感にアンテナを張って知識として持っておき、いざというときに自分で考えて行動できることが求められます。

避難所は頼れない?「在宅避難」のススメ

――具体的にはどう取り組めばいいですか。

 

巨大な災害を社会学的に考えると、地震・津波・液状化などが起きることで、水や電気やガス、そして衣食住すべてのサプライチェーンの途絶が起こることも想定しておかなければいけません。「衣食住すべてのサプライチェーンの途絶が起こる」ことです。道路が寸断され物資が届かなくなる「陸の孤島」に取り残される事態を考えておくべきでしょう。

 

災害について、家庭や学校で「知る→考える(討議する)→行動する」態勢を整えておくことが重要です。

防災は堤防を作ることから、家族の食べ物を確保するまで幅広い定義がありますが、普段の生活に近い状態を維持できることが「防災」そのものだと考えています。

 

――「在宅避難を基本としたい」と提案しているそうですね。

 

近年、報道による避難を促すアナウンスが「ただちに避難所へ」から「ただちに身を守る行動をとってください」へ変化していることにお気づきでしょうか。ハザードマップも、参考になり得ますが、絶対ではありません。自分の安全のためには、安全な場所を自己選択することが大切になってきました。

多くの自治体では、避難所の定員は一人あたり2㎡程度の面積で計算しています。それでも住民数に対して避難所が不足している自治体が多いのが現状です。もちろん冷暖房もなく、トイレや着替えにも気を使うでしょう。避難所は地域住民全員の「生活の場所」でなく、「一時的に滞在する場所」として設定している自治体が多いようです。

 

普段からいろいろな災害対応を考えておく中で、自分スタイルの在宅避難も可能性に含めておいてほしいと思います。自宅がつぶれたり、津波で流されたりする恐れが低い限り、安全に配慮した在宅避難がよいと個人的には考えています。

在宅避難に水、食糧、そしてテント!

――在宅避難を前提にしたら普段からどのように対策したらよいですか。

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