アウトドアだけじゃない!専門家が伝授 災害時のテント活用法

災害が発生して電気もガスも水道も止まってしまい、冷暖房も動かない、助けもこない。そんなピンチに陥ったときに、テントを使えば自分なりに過ごせる「自分スタイル」が可能です。住まいを背負ってどこにでも移動でき、平時も災害時も工夫次第で楽しく快適に過ごせ、災害時にも日常らしさを継続する。テントでそんな「ヤドカリライフ」を考えてみませんか?

なぜテントなの?それは避難所が過酷な環境だから

一般的に、避難所の1人当たりの面積は1.5~2㎡。畳一枚程度のスペースしかありません。冷暖房も期待できない狭い環境で、知らない人と同じ空間で寝泊まりするわけです。避難所生活にはそれなりの準備と覚悟が必要です。

さらにコロナウイルス感染防止の面から密を避ける必要まである昨今、災害時の「住」を担う避難所の環境はさらに難しくなっています。

写真説明:東京・荒川が氾濫した場合の避難所イメージ。1人あたり約1.5㎡

災害時にテントはどう利用できる?

一方で、災害時のテント利用にはさまざまなメリットがあります。具体的に挙げてみましょう。

避難所内での簡易個室として

知らない人との共同生活が大原則となる避難所で、プライベートな空間を確保することは非常に大切です。着替え、洗濯物干しをはじめ、おむつ交換、授乳にも便利です。横になりたいときやくつろぎたいときなど、使い方はアイデア次第です。
コロナ禍の避難では、テント利用により感染リスクを下げることも期待できます。

またテントの設置場所は体育館内でなくても、廊下、玄関、軒先なども使えます(実際の天候や環境に応じて、安全第一で判断してください)。

屋外での避難場所として

テントは風雨もしのげるので、屋外でももちろん使えます。避難所に行かず、自宅の庭などを避難場所とすることも可能になります。
窓がメッシュになっているタイプなら、暑い夏の風通しや虫よけも対策できます。

障がいがある方への合理的配慮として

障がいの特性によって、周りの人の気配が気になって休めない、不安になる、環境の変化が苦手な方もいます。そういった方にも、テントという落ち着いた空間を確保することは有効でしょう。

普段から事前の備えとして自宅でテント生活に慣れておくこともおすすめです。「テントごっこ」は結構楽しいものです。もちろん障がいのない方も、遊び感覚でぜひ取り組んでみてください。

こちらの画像は、家の中でテント暮らし体験を楽しむダウン症の豊田紘美さんと母親の笑子さんを2020年6月に取材した際の様子です。

笑子さんはこのようにお話しされました。
「障がい者は体育館などへの避難には抵抗があるかもしれません。プライバシーの面も心配です。(娘は)子どものころからテントが好きで、河原でキャンプの楽しい思い出があります。このテントはワンタッチで広げられて便利。2人ならゆったりと広く寝られます」

コロナ感染者の隔離スペースとして

もし家族に新型コロナウイルスの感染者が出て自宅待機となった場合、テントを使って部屋をゾーニングすることができます。

写真説明:設置の際は入り口を風上側に。新型コロナウイルスに陽性になった感染者をサポートしつつ、空気の流れをコントロールできる

写真説明:感染者をサポートする際には100円ショップのレインコート、手袋、フェースシールドを装着。感染リスクを軽減できる

テントはそれほど高価なものでなくても十分です。大手通販サイトなどでは、3~4人用のものを5000円弱から入手できます。

テントの代用。軽ワゴンやキャンピングカーも利用しよう

災害時にはテント以外にも「ヤドカリライフ」の方法があります。

軽バン車

軽バン車(軽自動車のバンタイプのもの)は、自家用車として普段使いやレジャーに使えるのはもちろん、災害時に大人2人が足を伸ばせる空間を確保できます。

装備として、水タンクやソーラー設備を搭載している車両や、ペット同行避難用のケージ積載スペースが設けられた車両もあります。

(株)岡モータース(高松市)提供

キャンピングカー

アウトドアブームで関心を集めるキャンピングカーは、避難場所にもなります。なかにはシャワーやトイレ、ガスコンロ、エアコンの付いた車両もあり快適性も十分です。
乗用車でけん引できるタイプ(トレーラー)なら値段も比較的安価です。

ビニールハウス

農作物を育てるために使われるビニールハウスも、固定型のテントとして活用できます。夏の暑さや荒天には不向きですが、選択肢としておくとよいでしょう。

テントでどこでも寝泊まりできる「ヤドカリライフ」を!

2021年2月、「防災教育研究会かがわ」で高齢者や障がい者支援を想定した防災研修会を開き、テント避難や自宅内ゾーニングの実習を行いました。

その際、参加者から「避難所でテントが縦一列に並んでいる報道を見ましたが、コロナウイルスの空気感染を防ぐには互い違いにずらして設営すべきでは」といった意見も出されました。

このように、災害の起こる前からイメージを膨らませて考え実践することが、災害に備えることにつながります。自治体から配られるハザードマップなどを参考に、家の周りや避難所付近の地形、災害リスクやその対応を考えておくことを大切にしましょう。

災害直後はインターネットや通信が途絶されることも予想されます。自分の命は自分で守ること、そして普段からそのための「知識と判断力と行動力」を身につけること。これが一番大切です。

<執筆者プロフィル>

花崎哲司(はなざきさとし)
防災教育研究会かがわ座長、国立研究開発法人防災科学技術研究所災害過程研究部門客員研究員。多様な視点からの障害者防災、高齢者防災、マンション防災を研究、バリアフリーな防災社会をめざす。

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