高層オフィスビルでの大地震!ココに気をつけて

地震は季節・時間帯を問わず突然生じますが、地震に対してどのように対応し、行動すればいいのかは地震に遭遇した場所や環境によって異なります。
今回は高層オフィスビル内で勤務中に大きな揺れを伴う地震に遭遇したと想定し、注意していただきたいこと、事前に承知しておいていただきたいことをまとめました。

地震対策は場所によって異なる

まず覚えていただきたいことは、そのとき、あなたがどんな場所にいるかによって地震の影響は大きく異なるということです。

最大震度7の揺れに遭遇したとしても、広々とした公園の芝生上ならほとんど被害を受けることはないでしょう。一方で、震度4の揺れであっても老朽化の激しいレンガ積みの建物の中にいたのであれば、命に関わる事態になりかねません。

では、あなたやあなたの身近な人が高層オフィスビル(高層建築物)にいたらどうでしょうか。高層オフィスビルが地震に対してどんな特性を有しているかを見ていきましょう。

高層ビルは構造種類によって3タイプある

一般的に15階以上もしくは高さ60m以上の場合、高層ビルと言います。高層ビルは対地震によって以下の3タイプに分かれます。

1)耐震構造の高層ビル
建築基準法他関係法令の耐震基準を満たしているビルで、建物の頑丈さ(強度)によって地震に耐える仕組みです。最も一般的なものです。

2)免震構造の高層ビル
地盤と建物(基礎)を構造的に分離する免震装置を設置していて、地震の揺れ(横揺れ)を建物(躯体)に伝わりにくくしています。ただし縦揺れは直接振動が伝わります。

3)制震構造の高層ビル
建物の主要部位に制震装置(制震ダンパーなど)と呼ばれるパーツ、装置を設置していて、地震の揺れを上手に制御して建物の揺れを小さくします。

あなたの職場が入っている高層ビルは耐震構造、免震構造、制震構造のどのタイプでしょうか。3タイプで影響の度合いが異なりますので、ぜひ確認しておいてください。

高層ビル内での地震リスク(注意点)とは!?

続いて高層ビル内で仕事中、大地震に遭遇した場合の注意点を耐震構造、免震構造、制震構造に分けて紹介していきます。

固定されていないオフィス機器が凶器になる!

耐震構造の高層オフィスビルの場合、特に注意を必要とするのがオフィス機器や什器(じゅうき)による衝突被害です。

オフィス内にはデスク、コピー機、パソコン機器、収納棚などが固定されないまま配置されていることが少なくありません。地震が発生すると、これらのオフィス機器が凶器となって動き回ることが考えられます。

オフィスが耐震構造ビルにある場合、自席から周囲を見渡してください。背後の収納棚が倒れてきたり、電子機器類の直撃を受けたりすることがないかなどです。リスクがある場合、機器や什器の固定を心がけ、周囲とも共有してください。

長周期地震動で揺れ幅が増大する!

高層オフィスビルならではの地震リスクが長周期地震動による影響です。長周期地震動は小刻みに揺れる周期の短い揺れと異なり、船に乗っているような長い周期で揺れます。高層オフィスビルは長周期地震動と共振して揺れ幅が増幅されると報告されています。

内閣府の「長周期地震動に対する検証」によると、「高層ビルの上層階では横方向に2~3m動く可能性がある」ことが示されています。オフィス機器などが2~3mの揺れ幅の影響を受けた場合、その場にいる人は命の危機にさらされます。機器の固定などの対策を必ずしておきましょう。

参考:内閣府 防災情報のページ「特集1 長周期地震動への備え~南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動の影響とは?」

建物内で火災(漏電火災)に巻き込まれる!

どのタイプでも高層ビル内にいる場合に注意しなければならないのが、建物内火災です。オフィス空間ではオフィス機器の設置にあわせてたくさんの電気配線がなされています。
高層オフィスビルでは地震発生後に多くの電気配線の断線などが生じる可能性が高く、漏電による火災(漏電火災)のリスクに注意する必要があります。
自分の職場はもちろん、オフィスビル全域で火災の発生がないかどうかをチェックしましょう。漏電火災は地震の数時間後に生じる可能性もあるので、地震発生後しばらくは注視しておくことが大切です。

高層オフィスビル内火災では、炎よりも有毒ガス(煙)のほうが危険です。気が付いたときには有毒ガスによって避難経路が断たれていたという事態もありえます。大きい揺れを感じたときはまず安全な場所に身を隠して揺れが収まるのを待ち、その後、時間をおかず非常階段など建物外へ一時避難するようにしましょう。

エレベーター内に閉じ込められる!

高層オフィスビルならではのリスクがエレベーター内に閉じ込められることです。
エレベーターの多くは震度5以上の揺れを感知した時に自動停止するようになっています。
大きな地震が発生した時は停電も同時に発生する可能性が高く、そうなるとエレベーターが緊急停止し、エレベーター内部に閉じ込められてしまうのです。

2018年6月に起きた大阪北部地震では最大震度6弱で339件ものエレベーター内閉じ込め事故が発生しました。M6.1の中規模地震で大きな人的被害はなかったのにもかかわらずです。

※大阪北部地震(2018年6月18日)におけるエレベーター内閉じ込め台数について(国土交通省データ

  • 災害対象エリア内エレベーター台数:約19.7万台
  • 停止台数:約6.3万台
  • 閉じ込め台数:346台
  • 閉じ込められてから救出に至るまでの平均時間:約80分(最大約320分)

このときは救出されるまで平均で約80分、最大5時間20分かかりました。エレベーター内に閉じ込められると自力避難は難しく、外部からの救助を待たなければなりません。救助者の到着が確認でき次第、救助者の指示に従い行動していただければと思います。

強風時(台風など)の大地震で揺れが増幅!

免震構造の場合、もうひとつ気を付けなければならないのが強風時の大規模地震です。

免震構造は地盤と建物を構造的に分離することで地震の揺れを建物に伝わりにくくしています。ところが、強風下の地震ではその仕組みが逆効果となります。地震に対して免震装置が働いて地盤と基礎が分離し、その結果、強風によって建物が大きく揺さぶられる恐れがあるのです。

そのようなことを防ぐため、一定以上の強風時に免震装置が働かないように設定できる仕組みもありますが、その場合、地震の揺れを直接建物が受けることになります。いずれにしても不確定リスクがあるため、注意が必要です。
免震構造のオフィスビルで働いている方はこの点を覚えておいてください。

免震装置・制震装置の不具合リスク

免震構造建物は免震装置に、制震構造建物は制震装置に建物の機能性の多くを委ねています。

そのため装置が老朽化して不具合が生じたり、装置が不良品だったりした場合、地震発生時に想定していた通りに機能しない恐れがあります。免震構造や制震構造ビルの場合、装置を定期的に調査し、適切なメンテナンスを行っているかどうかが大切なポイントです。

まとめ

高層オフィスビルの地震対策は、あなたの働くフロアが低層階にあるのか、上層階にあるのかによって異なります。また建物の構造が耐震構造、免震構造、制震構造のどれかによっても違います。あなたや身近な人が普段いる職場はどのような建物なのかによって地震防災の考え方にも違いが存在することを認識しておきましょう。いざというときに対応し、適切に行動できるよう備えていただければと思います。

 

<執筆者プロフィル>
榑林宏之(くればやしひろゆき)
一級建築士(BAUMPLANNING一級建築士事務所代表)
中堅ゼネコン設計部を経て独立、一級建築士として活動。自然環境への取り組み(自然との共生)の一環として自然災害・防災(主に地震災害・防災)研究及び啓発活動を推進しています。

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