熱中症は「梅雨明け前後」が特に注意!


熱中症というと真夏の猛暑の時期をイメージする方も多いでしょう。しかし、実は熱中症患者が増え始めるのは盛夏を迎える前、7月上旬~中旬ごろです。この時期はちょうど梅雨明け前後にあたります。つまり熱中症は、梅雨明け前後から注意する必要があるのです。

この記事では、梅雨明け前後に熱中症患者が急増する理由や熱中症対策などについて紹介します。

気温は高くなくても…熱中症に注意が必要?

この画像は、2018年の熱中症による救急搬送者数を週ごとに示したものです。

(引用:消防庁―「平成 30 年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/item/heatstroke003_houdou01.pdf

7月9~15日に、熱中症による救急搬送者数が前週の2816人から10287人に急増しているのが分かりますね。そして7月16~22日にピークを迎えているのが分かります。
2018年は本州の多くのエリアで7月9日ごろに梅雨明けしました。つまり、救急搬送状況からみても、熱中症の患者は梅雨明け直後に急増しているわけです。

梅雨明け直後に熱中症患者が急増しているのはなぜでしょうか?
理由は以下の2つです。

梅雨明けして夏の空気に入れ替わった

梅雨の長雨は、「梅雨前線」と呼ばれる前線が日本付近に停滞することで起こります。
この梅雨前線を挟んで、北側は梅雨の涼しくて高湿度の空気、南側は真夏の熱くて高湿度の空気に覆われています。

(筆者作成)

そして真夏の空気が優勢になり、梅雨前線が北上すると梅雨明けです。

(筆者作成)

梅雨が明けると梅雨の空気から真夏の空気に入れ替わり、蒸し暑さが一気にアップします。この急激な気温の上昇によって、熱中症が増えるわけです。

夏の暑さに体が慣れていない

梅雨明け直後は、真夏の暑い空気に体が慣れていません。体が気温の変化についていけないことも、熱中症のリスクを高める原因となります。

先に挙げた熱中症救急搬送状況のグラフを見てもわかるように、梅雨明け直後に熱中症による救急搬送者数は急増していますが、それ以降は徐々に減ってきています。暑さのピークは8月ですが、このころには体が暑さに慣れてきているため、梅雨明け直後に比べると多くありません。

熱中症の対策の鍵となる暑さ指数「WBGT」

熱中症は気温が高ければ高いほど、また湿度が高ければ高いほどリスクが高まります。
熱中症になりやすい気象条件かどうかの参考になるのが、「WBGT」と呼ばれる暑さ指数です。WBGTは「気温」「湿度」「輻射熱(ふくしゃねつ)※」を取り入れた指数です。

「※輻射熱とは、日射しを浴びたときに受ける熱や、地面、建物、人体などから出ている熱です。温度が高い物からはたくさん出ます」(引用:環境省―「熱中症予防情報サイト」―「暑さ指数について学ぼう」よりhttps://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_lp.php

環境省(https://www.wbgt.env.go.jp/)や各気象会社では、このWBGTを基に熱中症予防情報を提供しています。

WBGTの数値と、日常生活での行動の指針は以下のとおりです。

※1 28以上31未満、※2 25以上28未満
(引用:環境省―「熱中症予防情報サイト」―「暑さ指数(WBGT)について」https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

環境省の調査によると、WBGTが28を超えると熱中症患者が急増するという結果が出ています。

前述のとおり、梅雨明け直後は暑さに慣れていないため、暑さ指数が低くても熱中症のリスクがあります。不安に感じる場合は指針だけで行動を決めるのではなく、少しやりすぎでも構わないので体の負担が減るように熱中症対策をしてください。

湿度が高いと熱中症になりやすい理由

ちなみに「気温が高いと熱中症になりやすいのは分かるけど、湿度が高くても熱中症になりやすいのはなぜ?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。

人間は体が熱くなると汗をかき、汗を蒸発させることで体温を下げています。暑い日に水をまくと涼しくなるのと同じ原理です。

洗濯物をイメージしてみましょう。湿度が低く空気が乾いていれば洗濯物は乾きやすいですが、湿度が高くて空気が湿っているとなかなか乾きません。
それと同じように、湿度が低いと汗は簡単に蒸発しますが、湿度が高いと汗が蒸発せず、体から熱が放出されにくくなります。そのため、湿度が高いと熱中症になりやすいわけです。

熱中症を予防するには?

以上を踏まえ、熱中症を予防するには以下のことを心がけてください。

・風通しのいい服を着用する(風で汗を蒸発させるため)
・なるべく日陰に入る(気温が低いため)
・日傘、帽子を着用する(頭部の温度上昇を防ぐため)
・水分、塩分をこまめに補給する(汗をかいて体温を下げるため)
・室内にいる場合はエアコンをつける(気温と湿度を下げるため)

熱中症かなと思ったら…応急処置

熱中症になると、めまい・頭痛・吐き気などの症状が表れます。症状が表れたら早めの応急処置が大切です。

応急処置の方法は次のとおりです。
・クーラーの利いた部屋や日陰など涼しい場所に移動する
・服をゆるめて体を冷やす
・塩分が含まれている経口補水液やスポーツ飲料で水分補給する
・安静にして回復するまで休息を取る

呼びかけに応えない場合は、救急車を呼びましょう。また水分を自力で摂取できない、応急処置をしても症状がよくならない場合は、医療機関を受診しましょう。

自分は大丈夫と思わずに熱中症対策を

熱中症は若くて健康な人でも危険があります。「自分は大丈夫」と過信していると、応急処置が遅れて命の危険にさらされることもあります。特に気温が急上昇する梅雨明け前後からは一段と熱中症に注意し、普段から熱中症予報なども活用して備えましょう。

<執筆者プロフィル>
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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