【気象予報士が解説】「南岸低気圧」の仕組みと防災のポイント

南岸低気圧は予報が難しい現象

南岸低気圧による雪は、気象庁が「予報の難しい現象」の一つとしています。
南岸低気圧が接近すると雨や雪を広範囲に降らせるため、降水の有無を予報するのは難しくありません。難しいのは、降水が雨になるか雪になるかの予報です。

降水が雨なら災害の心配は少ないですが、降水が雪だと大雪災害につながります。雨雪の判別が難しいのは、南岸低気圧が接近するときの地表付近の気温が0℃前後になるためです。

気温と降水には以下のような関係があります。
・3℃以上:雨が中心
・1~3℃:みぞれが降り始める
・0.5~1℃:雪になる。積雪はなかなか増えない
・0.5℃以下:本格的に積雪し始める

南岸低気圧の場合、地表の気温が1℃変わるだけで状況が大きく変わります。たとえば、地表気温が1.5℃と予想されているので積雪がないと判断したとします。しかし実際の気温が0.5℃であれば、積雪して交通障害などが起こる可能性があるわけです。

たった1℃の違いでも大雪災害になってしまうのが南岸低気圧の怖さです。

南岸低気圧で雪が降る目安

南岸低気圧で雪が降るかどうかは、南岸低気圧と日本列島の距離によって決まってきます。
まずは、南岸低気圧と日本列島の距離による気象状況の違いをご覧ください。

南岸低気圧からの距離が遠いと雪が降りやすい代わりに、雪雲が届かなくなり降水そのものがなくなります。反対に南岸低気圧からの距離が近いと降水量は多くなりますが、気温が上がって雨が降りやすくなります。

関東で雪が降る目安とされているのが、八丈島よりやや南を南岸低気圧が通過する場合です。

また1500m付近の気温が-3℃以下になると雪の可能性が高くなると言われています。気温は標高が高くなるにつれて低くなり、1500mでだいたい7.5℃ほど下がります。この場合の地表の気温は4.5℃くらいになりますが、雨や雪が降ることによって空気がさらに冷やされて、気温が0℃前後まで下がり雪になるというわけです。

ただ、実際は低気圧の強さや降水の強さ、滞留している寒気の影響などの小さな要因で雨雪が変わることもあります。南岸低気圧で雪が予想されているときは、最悪の事態を想定して備えることが大切です。

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