コロナ下の防災訓練 密回避に知恵を加えて

制約のなか独自の工夫で継続実施

コロナ禍で避難訓練や防災教育など災害に備えるための実践的な活動が制約されている。密集や対面を避けようと当面の活動が軒並み中止となる中で、独自の工夫を凝らして継続している地域もある。逆境を切り抜けるための取り組みから、新たに気づくことも多いという。

小型無線機利用で「かえってリアル」

滋賀県草津市の山田地区は2020年11月、地震を想定した防災訓練を行った。避難所に参集するという従来の形式に代わって、小型無線機で連絡を取り合った。

人が走って情報を伝えるのは効率が悪いと無線機の導入を進めてきた。2019年に初めて訓練に使った時は、避難所に集まって近くから交信した。

今回は14の町内会が各地の被害状況や安否情報を、住民組織の対策本部へ無線機で伝える訓練にした。「多くの住民が家屋の下敷きになっている」などの情報が次々に寄せられ、本部は集約や分析を行った。防災担当の山本薫さん(66)は「実際の災害時には、顔を合わせて連絡し合うのは難しい。参集を避けることで、かえってリアルな状況で訓練ができた」と振り返る。

各家庭で垂直避難を実施

京都府宇治市の槙島(まきしま)東地区も大勢が集まる訓練をやめて、水害に備えて各戸で〈垂直避難〉を試す訓練を2020年10月に行った。

1953年に近くの宇治川が氾濫した時にどれくらい浸水したかを示す資料を自主防災組織が配り、2階への避難で身を守れるか、家族会議を開いて考えるよう求めた。防災組織を取りまとめる辻昌美さん(84)は「平屋の家庭は近くの2階建てへ避難させてもらえるよう相談するなど、見過ごしてきた課題をはっきりさせ、解決策を考える機会になった」と評価した。

オンラインを活用するのも有効だ。福岡市は防災週間中の2020年9月1日~5日、無料通信アプリLINEを使った訓練を行った。参加登録した人に、期間中のどこかで突然、災害発生を知らせる通知が届き、メッセージや動画に従ってスマートフォンの画面を操作すると、ハザードマップや避難場所を確認できる。1万4857人が参加登録し、「防災意識が高まった」という声が多く寄せられた。

子ども主体で多言語の表示板を作成

子どもたちが学校や地域で取り組む防災教育や実践活動も、取り組みを絶やさないための模索が続いている。

南海トラフ地震で大津波の襲来が想定されている高知県四万十町の興津(おきつ)地区は、子どもたちが主体となって防災活動を展開してきた。コロナ禍の制約がある中でも「できることはないか」と話し合った中学生たちは、地域に技能実習生の外国人がいることから、津波への警戒を呼びかける表示板を英語、中国語、フィリピン語、ベトナム語の多言語で作成し、いろいろな所へ貼り出した。実際に対面して注意を訴えかけるのが難しい今だからこそ生まれた成果だと言えるだろう。

近藤誠司・関西大准教授の研究室では、学生たちが小学校に出向いて、子どもたちと一緒に校内放送で流す防災番組を作る活動が、秋にようやく再開した。担当の上田圭汰さん(21)は「対面できる機会を大切にしたい、子どもたちを守りたいという気持ちがより高まった」と話す。

活動を止めない道を

コロナ禍は様々な社会活動に負荷をかけ、停滞させる面に目が行きがちだが、よく目を凝らせば、新たな方法が生み出されたり、潜在的な可能性が現れたりする効能も見つけられるはずだ。これまで地道に続けてきた実践活動を中止してしまうのはもったいない。関係者で知恵を出し合い、活動を止めない道を探ってほしい。

(読売新聞 2020年11月16日掲載 編集委員・川西勝)

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