陸自「機動」旅団長が語る「南海トラフへの対応」

写真説明=任務について説明する陸上自衛隊第14旅団の遠藤充旅団長(香川県善通寺市で)

全国どこへでも駆けつける「機動旅団」

四国全域を管轄する陸上自衛隊第14旅団(香川県善通寺市)は、大災害など有事の際、全国どこへでも駆けつける「機動旅団」として、2018年に全国で初めて改編された。2020年8月に旅団長に就任した遠藤充・陸将補に南海トラフ地震への備えなどについて聞いた。

――懸念される南海トラフ地震にはどのように対応するのか。

第14旅団は、善通寺市の第15即応機動連隊や第14偵察隊、第14通信隊などのほか、高知県の第50普通科連隊、徳島県の第14施設隊、愛媛県の中部方面特科隊などで構成する。

発生後72時間は全力で人命救助

南海トラフ地震発生時、高知や愛媛は各県の部隊、香川、徳島は第15即応機動連隊が主となって対処する。被災者の生死を分ける発生後72時間は、人命救助に全力であたる。高知や徳島の被害が大きいと予想されるが、香川や愛媛の被害が小さければ、担当する部隊を割り振る。

100時間以内に司令部を移す

100時間以内には、私を含め司令部を(被害が最も大きいと予想される)高知に移す。本四架橋が無事ならば、広島など各地から応援が入る。津波が落ち着けば海路から海上自衛隊の部隊も入るし、山間部にある高松空港に航空自衛隊の輸送機などで、重機など様々な物資、隊員らが到着する。

ただし、地震の発生で山間部の道路が崩れている可能性が高く、高知を中心に多数の孤立集落の発生が考えられる。津波で押し寄せた海水が、海抜の低い場所に残り、民家や集落の周りが池のようになるかもしれない。そのような事態に備え、ヘリで取り残された被災者を助けたり、川や池でゴムボートや舟艇などを操作したりする訓練も行っている。

北海道胆振東部地震で「ブラックアウト」を経験

――旅団長自身、どのような災害派遣を体験したか。

北海道の南恵庭駐屯地で第3施設団長を務めていた時、北海道胆振東部地震が発生し、大規模に停電する「ブラックアウト」を経験した。電気が使えないのは厳しい。通信一つとっても、部隊の電話と無線だけが頼りだった。

様々な災害に対応するため、年に1回は、シナリオを変えて、「南海レスキュー」の訓練をしている。中四国、近畿などを管轄する陸上自衛隊の中部方面隊(兵庫県伊丹市)が主体となり、海上、航空自衛隊も連携する。

到着までは「自助」「共助」で命を守ってほしい

――大地震発生時、自衛隊到着まで市民はどう動けばよいか。

まずは「自助」で自分の命を守る。例えば、津波発生時に小学生が通学路に一人でいるような場合、「家に帰らずに近くの山に登る」などと、普段から対処法を繰り返し、教えておくことが大切だ。

次に近隣との助け合いの「共助」。自治会などの単位で、お年寄りらを助けないといけない。そのために、どの家にどんな人が住んでいるかを互いに知っておくことが必要。四国は人間関係が濃密なので共助も期待できると思う。

(読売新聞 2020年12月28日掲載 高松総局・立花宏司)

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