災害時の仮設はコンテナで 業者と自治体に協定広がる

事前組み立て すぐ入居 「避難所ストレス」解消に

被災地の仮設住宅として「コンテナ型住居」が注目され、業者と自治体が被災時の提供協定を結ぶ動きが広がっている。事前に組み立ててあり、搬送後すぐに入居できる。避難所の集団生活による住民のストレスを早期に解消するのに有効だという。一方、あらかじめ災害に備えて保管するスペースの確保が課題で、専門家は「官民が連携して事前に準備を進めるべきだ」と指摘している。

九州豪雨の熊本へ 茨城などから運搬

2020年7月4日の九州豪雨で被災した熊本県球磨(くま)村の村総合運動公園。県が設けた「ムービングハウス」と呼ばれる1戸約30㎡のコンテナ型住居33戸が整然と並ぶ。発生から18日後に茨城県や北海道からトレーラーで運ばれ、8月2日には入居が始まった。

写真説明:九州豪雨の被災地で利用されているコンテナ型住居。サイズは、縦2.4m、高さ2.6mで、横の長さが12mのものと6mのタイプがある(熊本県球磨村で)

高い気密性・防音性

コンテナ型住居の外観は貨物輸送用のコンテナに似ている。工場で風呂やトイレなど内装を仕上げており、電気や水道の工事を行うだけで入居できる。1戸当たり約450万円からで、役目を終えれば、別の被災地に移設できる。2016年の熊本地震で設置されたプレハブ型(平均約800万円)の半分ほどの費用だ。

球磨村の担当者は「作業開始から約2週間で設置でき、被災者の負担軽減につながった」と説明。自宅が全壊し、家族6人で入居した男性(47)は「部屋の気密性が高く、生活音も気にならない。気兼ねなく生活できる」と話す。

災害関連死の防止に

復興庁の報告書(2012年8月)によると、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県では、震災後1年間の災害関連死の約3割は、避難所生活などによる肉体的・精神的疲労が原因とみられるという。空調、衛生環境の整わない状況や、集団生活がストレスになっており、「仮設住宅への早期入居が重要」とした。

国は2018年4月、建設型仮設や民間アパートなどを借り上げる「みなし仮設」に加え、コンテナ型住居も災害救助法の事務取扱要領に盛り込んだ。

2018年7月の西日本豪雨では、岡山県倉敷市の柳井原仮設団地にコンテナ型住居40戸が設置された。住んでいた女性(42)は「4つのコンテナを組み合わせた集会所が住民同士の交流の場になり、高齢者の孤立も防げた」と話す。2020年9月には退去済みの12戸が球磨村に移設された。

「南海トラフ」対策でも注目

コンテナ型が注目を集める背景には、南海トラフ巨大地震がある。政府は死者・行方不明者が最大で23万1000人、建物の全壊・全焼は209万4000棟に上ると試算するが、自治体の対策は進んでいない。

最大34mの津波で約6300棟が全半壊や焼失すると想定される高知県黒潮町は仮設住宅の用地確保が難航。町の担当者は「コンテナ型は分散設置できる利点もある。工期も短く、導入を検討したい」と話す。

46社が加盟する日本ムービングハウス協会(北海道)によると、災害発生から1か月で500戸ほど供給することを目標に掲げる。現在、愛知、高知県など各地の自治体と災害時の提供協定を結ぶ。

平時の保管場所に課題

コンテナ型には課題もある。遠方だと被災地への運搬に時間がかかり、費用も高くなるため、事前に生産拠点や保管場所を各地に分散させる必要がある。立教大の長坂俊成教授(防災危機管理学)は「コンテナ型住居を都市公園などに置き、研修やレジャーの施設として活用しながら、災害時にすぐに移設できるような仕組みをつくっておくべきだ」と話している。

コロナ医療現場でも活用

コンテナ型住居は、新型コロナウイルスの医療現場などでも活躍している。

2020年4月、長崎市に停泊中のクルーズ船でクラスター(感染集団)が発生した際には、岸壁に50戸が設置され、患者の経過観察や医療従事者の待機場所として活用された。同6月には東京都三鷹市などもPCR検査場として利用した。

提供したのは、関東を中心に700戸以上のコンテナ型住居を使ってホテル事業を展開する千葉県市川市の建築・不動産会社。災害時は被災地などに1日当たり1戸1万円から貸し出す計画で、30を超える自治体と協定を結んでいる。

(読売新聞 2021年2月1日掲載)

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