災害時マンホールをトイレに 高知市が避難所に設置へ

写真説明:トイレとして使えるマンホールが並ぶ高知市立初月小学校の駐車場。災害時にはふたを開け、便座と仕切りを設置する

水分補給控えによる「関連死」防ぐ

災害発生後の避難生活で亡くなる「災害関連死」を防ぐには、避難先でのトイレの確保も欠かせない。熊本地震(2016年)ではトイレの回数を少なくしようと水分を控え、体調を崩す被災者が相次いだ。南海トラフ地震に備え、高知市は2021年度から指定避難所となる小中学校などに「マンホールトイレ」の設置を進める。

便座と仕切りを設置し使用

高知市立初月小(高知市南久万)では、体育館下の駐車場に「災害用トイレ」と書かれたマンホールのふたが並ぶ。地下には浄化槽として使われていた貯留槽があり、災害時にはふたを開け、便座と仕切りを設置してトイレとして使用できる。

写真説明:マンホールのふた。中央の円内に「災害用トイレ」との文字がある

1000人が2週間使える容量

同校には最大で約1900人が避難すると想定され、マンホールトイレは一度に10人以上が利用できる。貯留槽はくみ取り式で、約1000人が2週間以上は使える容量があるという。

被災地でのトイレの確保は、大規模災害が起きるたびに課題になってきた。車中泊避難も多かった熊本地震では断水でトイレが使用できず、十分な水分補給をせずにエコノミークラス症候群などで救急搬送されるケースが続いた。同地震の犠牲者の約8割は災害関連死だった。

このため、高知市は2017年から災害時のトイレの確保についてプロジェクトチームで検討。発生3日目までは避難所に備蓄している携帯トイレや簡易トイレで対応できるものの、その後はマンホールトイレなどが必要になると結論づけた。

下水管との接続も

それを受けて、市内の指定避難所246か所のうち小中学校など新たに39か所に、2021年度から5年間でマンホールトイレを順次設置することにした。市街地など下水整備地域では下水管と接続する。岡崎誠也市長は「避難所の空調とトイレの整備を進め、災害関連死を防ぐ」と話す。

国交省が整備促す

阪神大震災を経験した神戸市は避難所へのマンホールトイレの設置を完了し、熊本地震では熊本市で活用された。国土交通省は各自治体に対し、整備を促している。

木村玲欧・兵庫県立大教授(防災心理学)の話
トイレを我慢すると水分や食事を控えてしまい、脱水症状や体力低下など健康の悪化を引き起こす。過去の災害ではエコノミークラス症候群で死に至ることもあった。避難生活が長くなるほど、安心して使用できるトイレを確保することが重要になる。

(読売新聞 2021年2月11日掲載 高知支局・古谷禎一)

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