震災10年 オフィス街の備え 首都直下想定し強化

写真説明:スマートフォンを使った一時滞在施設への入館手続き訓練も実施された(2021年2月2日、東京都千代田区で)

10年前は515万人が帰宅困難に  都市の弱点露呈

東日本大震災から10年。その日、最大震度6強の揺れに襲われた首都圏では多数の帰宅困難者が発生し、巨大都市の弱点が浮き彫りになった。災害に対するオフィス街の備えはどう変わったのか。

<2011年3月11日夜。大半の公共交通機関が運転を見合わせたため、都心主要駅は帰宅困難者であふれ、都の施設や学校には会社員が押し寄せた。地下通路や公園で一夜を明かす「帰宅難民」が続出した>

三菱地所など10団体が避難誘導訓練実施

2021年1月下旬から2月上旬にかけ、昼間人口が突出して多い東京・丸の内周辺に多くのオフィスビルを抱える三菱地所や森トラスト、JR東日本など約10団体が参加し、災害訓練が行われた。2月2日には東京駅前の「丸ビル」(東京都千代田区)で、帰宅困難者役の女性がスマートフォンを使うなどし、どの施設に避難すればいいか混雑状況を示して誘導するシステムを試した。

三菱地所は、東京駅周辺で、丸ビルなど自社保有のオフィスビル17棟を、帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設とする協定を千代田区と結んでいる。災害が発生し、区側から要請があればロビーや会議室などを3日間程度開放する。震災当時にはなかった仕組みだ。沢部光太郎・都市計画企画部統括は「民間企業も、担える災害対策は積極的に取り組む必要がある」と強調する。

◆オフィスビルを活用した一時滞在施設

東京都 一時滞在施設で43万人分受け入れ

内閣府の推計によると、東日本大震災の際には首都圏(1都3県と茨城県南部)で515万人の帰宅困難者が発生した。うち東京都内は352万人に上った。

東京都は1月時点で1132の一時滞在施設を確保し、計約43万人を受け入れられるという。

行き場のない人が多数見込まれ、特に手薄なのは…

だが、30年以内に70%の確率で起こるとされる首都直下地震では、都内で行き場のない帰宅困難者は92万人に上る見通しだ。現在の受け入れ可能人数は、半分にも満たない。都心部では三菱地所のほか森ビルなど大手企業による協力が進むが、都心から歩き疲れる距離にあたる都と隣県の境目周辺で、施設確保が手薄な状況という。

帰宅困難者の受け入れ訓練もウイズコロナ

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、災害時の感染症対策も難題だ。
森ビルが管理する六本木ヒルズ(東京都港区)で2020年9月、新型コロナ感染が拡大する下で首都直下地震が発生したとの想定で、帰宅困難者の受け入れ訓練を実施した。

ビルの入り口で検温や体調の聞き取りを行うことで、従来より人手がかかったり、受け付けに時間を要したりする問題点が判明した。森ビルの細田隆・災害対策室事務局長は「コロナ禍でも自然災害はいつ起こるか分からない」と態勢の見直しを急ぐ。

帰宅困難者対策には仕組み作りが重要

東京工業大の大佛(おさらぎ)俊泰教授(地域防災計画)は「帰宅困難者対策を進めるには、民間企業の協力が不可欠だ。貢献した企業が社会的評価を得られる仕組み作りが重要だ」と指摘する。

(読売新聞 2021年3月3日掲載)

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