高齢者施設のBCP! 離れた地域間の助け合いで災害時の運営継続

高齢者施設が災害に見舞われ、サービスを継続できなくなることがある。利用者が慣れない避難先での生活を余儀なくされるなど、影響は大きい。いつ起きるかわからない災害だが、離れた地域間で助け合いの関係を築き、事業の継続を目指す取り組みを取材した。

通称おせっかいネット

台風通過翌日に現地入りして手厚い支援

■福島県須賀川市←全国各地

2019年10月の台風19号による水害で、福島県須賀川市の「グループホームすずらん日向」には大量の濁った水が流れ込んだ。18人の入居者は避難していたものの、居住スペースや食堂などはすぐに利用できる状況ではなくなった。そんな時、県外の同業者の「助っ人」たちが駆けつけた。

宮城県と山形県でそれぞれ福祉施設を運営する法人から最初の12人が現地入りしたのは、台風通過の翌日。グループホームを運営する特定NPO法人「豊心会」の職員らに合流し、すぐに泥のかき出しなどに取りかかった。4日間で居室などの清掃や消毒が完了し、入居者が戻ることができた。

同法人の今野秀吉理事長(56)は「『行くよ』とすぐに連絡があって、うれしかったし、助かった。仲間の力がなければ、こんなに早く施設を再開することは無理だったかもしれない」と振り返る。

写真説明:宮城県から福島県須賀川市のグループホームに駆けつけ、施設の再開に向けて作業する「助っ人」たち(社会福祉法人「功寿会」提供)

正式名称は災害支援法人ネットワーク

この災害で生きたのは、各地の介護事業者が任意で作る「災害支援法人ネットワーク」というつながり。被災した仲間のもとへ勝手に駆けつけて支援する決まりなので、参加事業者の関係者らは「おせっかいネット」と呼んでいる。

誕生のきっかけは東日本大震災だった。福島県などの被災地支援に携わっていた介護福祉士の和田行男さん(65)が「災害時には、一つ一つの法人の力は限られてしまう。介護事業者同士のネットワークが必要だ」と呼びかけ、2011年8月に結成。現在、15都道県の20法人が参加している。「被災地以外では、災害はひとごとになりがちだが、『あの人、大丈夫かな』と顔が思い浮かべば、違ってくる」。そんな思いで、年2回、持ち回りで参加法人の地元を訪れ、勉強会や交流会で関係を深めてきたという。

グループホーム東大井(東京)の管理者、内藤剛さん(42)は被災した職員宅の片付けを担った。「職員が早く職場に復帰できるようにするサポートも必要。役に立てるなら何でもやるという気持ちだった」と話す。

2週間でのべ45人の専門職が支援

約2週間で、のべ45人がおせっかいネットのつながりで支援に入った。食品や掃除用具、臭気対策で必要な空気清浄機などの物資も、事務局の呼びかけで、参加法人から続々届いた。

ホームの再開にめどがつくと、支援の重点は事業の継続に移った。

寿々グループ(名古屋市)の人財サポート部長、碓井信輝さん(47)は、ホーム職員たちの負担を軽減するため、入居者への昼夜の食事の提供やトイレの介助など現場のサポートに入った。「介護の専門職がボランティアとして支援に入ることで、指示待ちでなく、ある程度自分で考えて動けるメリットがある」と語る。

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