津波被害が30分以内に予測可能 対象地域が拡大

阪大・東北大などが開発・実用化

東日本大震災では、津波被害の全体像の把握に時間がかかり、国や自治体の救援活動が遅れた地域もあった。その反省から、地震発生後30分以内に、津波による浸水被害を予測するシステムが開発された。南海トラフ地震の津波が予想される地域で実用化されており、2021年4月以降は対象地域が拡大する。適切な初動対応が可能になることが期待される。

浸水開始時間などを30分以内に地図上に表示

このシステムは、地震発生から30分以内に、浸水開始時間や最大浸水深、建物被害棟数などを推計し、地図上に色分けして表示する。大阪大や東北大などの研究チームが開発し、「リアルタイム津波浸水被害予測システム」と名付けられた。

膨大な情報を処理して津波被害を推計

開発責任者の越村俊一・東北大教授(津波防災工学)が企業などに呼び掛け、2014年から共同研究を始めた。阪大と東北大のスーパーコンピューターを活用し、地震発生直後に届く国土地理院のデータから、断層が動いた領域などを割り出す。地形や人口分布、建物の位置など膨大な量の情報を加味して、津波被害を推計する。

地震発生や津波警報などで自動的に動き出す

マグニチュード6.5以上の地震が発生したり、気象庁から津波警報や注意報が発表されたりすると自動的にシステムが動き出し、30m四方ごとの浸水開始時間などを算出する。この計算は通常のコンピューターだと数日間かかるが、スパコンなら素早く結果が得られ、地震発生後30分以内で配信できるという。

「南海トラフ」で本格運用 日本海溝や千島海溝の地震にも

2018年から、南海トラフ地震に備え、鹿児島県から静岡県までの太平洋岸に襲来する津波を対象に本格運用を始めた。その後、対象地域を茨城県まで拡大した。さらに2021年4月以降は、日本海溝や千島海溝の地震による津波の被害を受ける地域にも対応する。

予測結果は主に政府や自治体などの災害対応に使われ、一般には公表されていない。首相官邸の危機管理センターや内閣府が既に活用しているほか、高知県や高知市などの自治体も訓練で使いながら実証実験を進めている。

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