訓練やグッズ配布…外国人にも南海トラフ地震の津波対策!

写真説明:避難訓練に参加するベトナム人ら(和歌山市雑賀崎で)

和歌山県内在住の外国人を対象に、避難訓練を行ったり、防災啓発グッズを配ったりして、災害に備える意識を高めてもらう取り組みが広がりつつある。東日本大震災など過去の大規模災害では外国人に必要な情報が届かず、逃げ遅れたり、支援が受けられなかったりする問題が繰り返されてきた。同じような事態を起こさないための模索が続いている。

訓練を繰り返し体で覚えてもらう

和歌山市雑賀崎の鉄筋加工会社「南海スチール」で2020年12月中旬、同社で働くベトナム人技能実習生ら9人を対象にした津波避難訓練が行われた。実習生たちは避難時の在留カード携帯や周辺の指定避難場所へのルートを確認した。訓練は2019年に続いて2回目という。

同社は約7年前からベトナムの技能実習生を受け入れている。中野一宏社長は「ベトナムは地震が少なく、災害への危機意識が薄い。訓練を繰り返すことで、体で覚えてもらいたい」と狙いを説明する。

来日して3年半の技能実習生、チャン・ミン・フォンさんは「地震が起こった際に何を持って、どこに逃げるか、事前に準備しておく大切さを学んだ」とゆっくりと言葉を選びながら日本語で話した。

南海トラフ地震の津波について多言語で説明

和歌山県によると、県内には2020年6月現在、7148人の外国人が住んでいる。「韓国・朝鮮」が2092人と最多で、中国が1333人、ベトナムが1172人、フィリピンが746人などと続く。2015年12月の6069人から1000人以上増えており、技能実習生の受け入れの増加が大きな要因という。

県は2019年に外国人向けの防災啓発DVDを約800枚製作し、県内の日本語学校や企業、市町村などに配布した。DVDでは多言語で南海トラフ巨大地震で津波が起こる可能性が高いことを説明。防災グッズの備えや英語で情報を得られるスマートフォンのアプリを紹介している。

県国際課の担当者は「国籍によって災害や防災への知識に大きなばらつきがある。近い将来に発生する可能性がある南海トラフ巨大地震も日本在住歴が長くないと知らない可能性がある」と危機感を示す。

易しい日本語による独自の防災ガイド

各市町村では多様な言語に対応できる職員を配置することが人員的に難しい。そこで分かりやすい単語や表現で外国人に情報を伝える取り組みが全国的に広がっている。出入国在留管理庁と文化庁も2020年8月にガイドラインを作成し、自治体や学校、企業で活用を促している。

簡単な日本語であれば理解できるという外国人は多い。例えば「震源」は「地震が起きたところ」、「迂回(うかい)」は「違う道を行く」などと言い換える取り組みだ。

県国際交流センターなどは、易しい日本語による独自の防災ガイドを作成。南海トラフによる津波の高さや到達時間、情報収集の方法、避難する際に用意する日用品などを掲載した。言葉の言い換え例も表にまとめており、同センターで配っている。

新型コロナウイルスが終息すれば、外国人観光客の回復も予想される。県は「災害時に外国人が困っていたら、住民らが易しい日本語を使って情報を伝えることができるように、県民にも周知していきたい」としている。

(読売新聞 2021年3月26日掲載 和歌山支局・岡田英也)

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