写真説明:内部にテーブルや電源などを備え、災害時に活用できるナミレのワンルームカー(静岡県浜松市で)
自社開発の災害避難対応「ワンルーム」
「キャンピングカーは『究極の防災グッズ』と言われているんですよ」
「ナミレ」(静岡県浜松市西区)代表の中村雅さんは力説する。販売するのは、軽トラックの荷台に取り付けられる災害避難対応の「ワンルーム」(個室)だ。部屋の中には、ソファや折りたたみ式のテーブル、キッチンのほか、トイレを収納するスペースもある。
広さ、遮音、施錠など災害時でも快適に
災害時でも快適に過ごせる仕様にした。避難所は通常、1人あたりの占有面積が狭く、プライバシーもないようなものだ。このワンルームカーは、ベッドルームを作れ、1人あたり3・3㎡のスペースが確保できる。カーテンの設置や施錠ができ、避難中も自分だけの時間を過ごせる。一般家屋と同様の断熱材により室内の温度を安定させたほか、外部の騒音をできるだけ遮断した。
ライフラインが止まっても
さらに、電気や水道が止まっている間に5日間暮らすことを想定。ソーラーパネルとバッテリーを組み合わせた電源を備えており、照明や携帯電話の充電に使える。水も20L備蓄する。
ナミレの社名の由来は「津波」と「レジスタンス」だ。2017年に津波や台風、豪雨といった災害で避難できる機器を開発しようと設立した。中村さんは自動車メーカーの元技術者で、長年、トランスミッション(変速機)の設計や開発などを手がけてきた。会社人生を歩む中で、1995年1月の阪神・淡路大震災で京都府長岡京市の実家が損壊した。東日本大震災の惨状にもショックを受けた。以前から「自分の技術を防災に役立てられないか」と思っていたという。
開発のいきさつ
最初に思い描いたのが、高圧ガスで瞬時に膨らむシェルター。例えば、車の中や玄関に置いておけば、津波が来たときに中に入って避難できる。ただ、実現には多額の費用がかかる。
現実的な製品として考えたのが、キャンピングカーだった。もともとキャンプが好きで、自動車の部品製造で得た自分の技術も役立てられると考えた。津波や河川の氾濫の際に、早めに高台に向かえば、車内で安全に過ごせ、何より荷物を抱えて避難する必要がない。
こうした構想が開発の基にあるだけに、「普段使い」を重視している。軽トラックに載せた状態の全高は2m20にとどまり、法律で可能な高さより30cm低い。居住スペースは狭くなるものの、法定上限の2m50の場合、平時の走行で横風の影響を受けやすく、速度が出ないという。暴風ならば、なおさらだ。大型商業施設の屋内駐車場に駐車できるメリットもある。