(画像はトヨタ提供)
約40万点の部品調達を「見える化」しカイゼン!
突然のコロナ禍などで、企業は、不測の事態への対応能力が改めて問われた。南海トラフ地震が予想される東海地方は、BCP(事業継続計画) などリスクへの備えが、企業の将来を左右する。災害に備える企業の現場を探る。
クルマに欠かせない1部品の生産が止まった
2020年10月、宮崎県延岡市にある旭化成子会社の工場で火災が発生し、自動車向けの半導体部品の生産ができなくなった。
トヨタ自動車の調達担当者は直ちに、データベース「レスキュー」で影響を調べた。レスキューは必要な部品や仕入れ先の情報など、巨大な部品のサプライチェーン(供給網)を「見える化」したものだ。
約3万点の部品からなるクルマは、一つでも不足すれば作れない。
「代替品は」「車の生産はできるか」「現地へ支援を」。担当者らは、急ぎ対策を検討した。
どう対処したのか
代替生産に応じたのが、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)だった。トヨタの担当者が那珂工場を訪れると、「感謝と恩返し」のスローガンが大部屋に掲げられていた。
2011年の東日本大震災で被災した同工場には、トヨタを含む自動車各社が復旧作業を支援した経緯があったためだ。
トラブルは続いた。2021年3月にはその那珂工場でも火災が発生し、半導体の生産停止に追い込まれた。
トヨタをはじめ国内の製造業界は延べ3万3000人超の応援を送った。黒々と燃えたクリーンルームのすすを取り除くなど、復旧作業を手伝った。
2021年4月17日に工場は生産を再開した。ルネサスの柴田英利社長は「奇跡的に再開できた」と感謝を繰り返した。
火災だけではない。コロナ禍や福島県沖地震、世界的な半導体不足――。自動車業界はこの1年間、次々とトラブルに襲われた。
これらを経て21年3月期決算は
しかし、トヨタが2021年5月12日に発表した21年3月期決算の最終利益は前期比10・3%増の2兆2452億円と、2ケタの増益を果たした。
◆トヨタの国内工場が2020年から2021年6月までに直面した主な出来事
※網掛けはグループを含めたトヨタの動き
写真説明:旭化成子会社の工場で起きた火災(2020年10月21日、宮崎県延岡市で)
写真説明:福島県沖を震源とする地震で土砂崩れが起きた常磐自動車道(2021年2月17日、福島県相馬市で)
「(トラブルの)ひとつひとつ、業績に大きな影響が出てもおかしくなかった」
近健太最高財務責任者(CFO)はオンライン記者会見で振り返り、「震災以降ずっとやってきた努力(の成果)」と説明した。