堤防決壊の32時間前!東大・JAXAが河川氾濫予測システム開発


写真説明:台風に伴う豪雨で堤防が決壊した長野市の千曲川(2019年10月13日)

2019年の台風19号で検証

東京大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究チームは2021年6月18日、共同開発した河川氾濫の予測システムを2019年の台風19号の接近・上陸時に利用したところ、9割の堤防決壊地点を平均32時間前に予測できたと発表した。気象庁の洪水予報より早く予測しており、チームは今後精度を改善し、自治体の災害対策に役立てたいとしている。

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システムの仕組み

システムは、JAXAの地球観測衛星「だいち2号」から得られる河川やその周辺地形、気象庁の降水予報などのデータを基に水位を予測。氾濫の危険性が高まる「200年に1回」の頻度とされる水位に達すると見込まれた場合、警告を出して危険を知らせる。

検証結果は

東日本を襲った台風19号では、国や都道府県が管理する河川の142か所が決壊したが、システムは92%の130か所で事前に警告を出した。警告から決壊までは平均32時間だった。

一方で、警告が出た地点は決壊した130か所を含めて542か所あったが、412か所は決壊しなかったため、76%が「空振り」という結果になった。

説明:台風19号によって決壊した堤防の位置と、その決壊箇所に対する警告の有無を示した図=「Scientific Reports」(2021年5月13日発行)掲載の論文「Applicability of a nationwide flood forecasting system for Typhoon Hagibis 2019」から

自治体との共有状況

洪水予測を巡っては気象庁が河川水位の実測値などに基づく予報を出しており、確実性が高い反面、発生の数時間前でないと出せない課題がある。また、気象庁以外が一般に公表することは認められていないため、チームは共同研究に参加する31自治体に限って情報共有する一方、参加希望の自治体を今後も受け入れる方針。

チームの芳村圭・東京大教授(水文学)は「より詳細な地形データなどを取り込んで精度向上を目指す。自治体には災害発生までの準備時間を確保するためにシステムを役立ててもらいたい」と話す。

(読売新聞 2021年6月19日掲載)

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