新潟市が豪雨対策で田んぼをIT化「スマート田んぼダム」実証事業


写真説明:実証事業のため給排水をスマートフォンなどで遠隔操作できる装置が設置された水田(2021年6月18日、新潟市江南区和田で)

田んぼの貯水能力で河川の雨水量を調整

新潟市は、豪雨による浸水被害の軽減に向け、「スマート田んぼダム」の実証事業に乗り出した。スマートフォンなどで遠隔操作し、豪雨前に水田の水を排出して貯水能力を高め、豪雨時に河川に雨水が過度に流れ込まないようにする。水田から水を出す際も雨や排水路の状況を見ながら量を調整し、減災効果をさらに高める。新潟県発祥の田んぼダムがIT技術も駆使して進化を続けている。

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実証事業は「流域治水」の観点から田んぼダムの整備を推進する農林水産省が2021年度に始めた。同省農地資源課によると、新潟県と秋田、宮城、栃木、富山、福井、兵庫、熊本の8県が取り組む。

流域治水は、河川の流域全体で関係者が一体となってハード、ソフト両面から取り組む治水対策。気候変動の影響で水害が頻発・激甚化していることが背景にある。田んぼダムも流域治水を実現する手法の一つだ。

田んぼをどうするのか

新潟県内では新潟市が公募に応じ、同市江南区和田地区の水田(4㏊)に自動排水装置15基や水位計などを設置。市農村整備・水産課によると、亀田郷土地改良区の関係者が降雨の予報などに基づき、スマホによる遠隔操作で豪雨前に地域の水田から水を一斉排出し、多くの雨水をためられるようにする予定。雨が峠を越えた後には、排水路の水位をみて計画的に排水する。

3つを比較

スマート田んぼダムの隣には、市が開発に関わった従来の田んぼダム装置(排水マス)がある水田(4・6㏊)、普通の水田(5・1㏊)があり、比較して効果や課題を検証する。予算額は1500万円を見込み、実証事業は2021年7月に開始した。

市の排水マスは内部に小さな穴の開いた板が設置されている。水田に降った雨を一気に排出せず、少しずつ出す仕組みで、同課の斉藤彰英課長補佐は「それぞれの水田から、どのくらいの水が流れてくるのか把握できない。スマート田んぼダムなら排水路に流す水量を管理でき、河川氾濫による浸水被害をなくせる可能性がある」と期待する。

田んぼダムの整備に力を入れるわけ

市が田んぼダムの取り組みを進める背景には、市の特殊な地形がある。同課によると、市内は約3割が海抜0m。実証事業が行われる亀田郷地区は信濃川と阿賀野川などに囲まれ、すり鉢状になっている。自然排水は困難で、機械で水をくみ上げて河川に流す。機械の排水能力の限界を超えた場合、浸水被害が起きる懸念がある。

市は2005年度から、排水マスの設置による田んぼダムの整備に力を入れており、昨年度は6047㏊に上る。江南区天野地区で田んぼダムの効果を調べ、整備後は浸水面積を22・8%減らせるという想定実験の結果も公表している。今後はIT技術の活用も模索することで、より治水能力が高い田んぼダムを目指すという。

そもそも全国屈指の米どころである新潟県は、田んぼダムの先進地で、整備は2002年度に旧神林村(現村上市)で全国に先駆けて始まった。2020年度には17市町村、1万5654㏊にまで広がっている。

◆新潟県内の田んぼダム面積の推移

防災力強化といった農村地帯の地域共同活動を支援する国の多面的機能支払交付金の対象となっている影響が大きいといい、県農村環境課は「田んぼダムは地域が一体となって取り組むことで大きな効果につながる。流域治水の観点からもさらに理解を広げていきたい」としている。

(読売新聞 2021年6月28日掲載)

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