電動車を災害時の給電に迅速派遣!トヨタなどアプリで実証実験

愛知県豊田市も参加して避難所へ派遣訓練

プラグインハイブリッド車(PHV)や燃料電池車(FCV)などの電動車を、災害時の「電源」として活用する取り組みが広がっている。給電訓練を行う自治体や、給電を想定した住宅も販売されている。脱炭素化の流れを受けて普及が加速する電動車の新たな用途として期待される。

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アプリでできること

愛知県豊田市とトヨタ自動車などは2021年7月、停電した避難所の要請に応じて「電源」となる車が派遣されるアプリの実証実験を行った。避難所が派遣を希望する場所や時刻、台数を入力すると、協力企業などの間に共有され、電動車が支援に向かう仕組みだ。

写真説明:避難所の支援に向かっている車両の位置を知らせるアプリの画面

派遣先では

大型台風で広範囲な停電が起きたという想定で、益富中学校など3か所の避難所が要請を出した。同市内のトヨタ系販売店8社が、営業車や試乗車などを派遣。益富中には、要請から25分後にFCVのミライや、PHVのプリウスなど5台が駆けつけた。専用コネクターを車とつなぎ、体育館の照明をつけたり、スマートフォンの充電を行ったりした。

写真説明:アプリの要請で電動車が次々と駆けつけ、避難所の給電にあたった(2021年7月21日、愛知県豊田市の益富中学校で)

アプリができた背景

アプリは2020年9月、トヨタの「先進技術開発カンパニー」が開発に着手した。きっかけは、2019年9月の台風15号で発生した千葉県を中心とする長期間の停電だ。トヨタは75台の電動車を派遣したが、停電している住宅や避難所の把握が難しく、車両の手配に手間取った。自らも支援に赴いた同カンパニーの武田弘輝さんは「駐車場で待機している時間も多く、もっと貢献できた、という歯がゆさが残った」と振り返る。

豊田市は、電源として使える公用車を約80台保有している。アプリの実用化時期は未定だが、実現すれば、企業や個人の電動車も融通しあうことが可能になる。太田稔彦市長は「不足物資を知らせて電動車で運ぶなど、アプリ活用の幅は広がるだろう」と期待する。

トヨタの電動車でできること

トヨタは2021年8月現在、外部給電に対応する電動車を22種類販売している。7月に発売された新型アクアやRAV4のPHV、プリウスなどは標準装備で、ハリアーやC―HRのHVはメーカーオプションで導入できる。

大容量の電池を搭載したプリウスのPHV(ガソリン満タン状態)ならば、一般家庭が日常使う電力量(1日あたり10 kWh)で約4~5日分の電力を供給できるという。

水素を燃料に走る医療用FCVを開発し、2021年7月中旬から熊本赤十字病院での試験利用を始めた。小型バス「コースター」にミライの技術を使った。車内の救急手当てに使われる電気を自力で賄うほか、車外にも約90 kWh の電力を供給できる。献血バスへの供給などが想定されている。

写真説明:トヨタが開発した医療用のFCV。医療現場や被災地への電源供給もできる

電動車以外にも

豊田通商は2021年3月、外部給電の機能がない旧型プリウスからの給電を可能にする電源キット「Re―Q(リキュー)」を発売した。ガソリン満タン時には約80 kWh の電力を供給できる。自治体や企業を中心に普及を図る。

トヨタホームは2020年9月、非常時給電システム「クルマde給電」の販売を始めた。住宅に外部電源用のケーブルや接続装置、スイッチボックスなどを取り付ければ、電動車から冷蔵庫や照明など家庭に必要な電力の供給を受けられる。1日程度の工事で導入が可能だ。

すでに約400件の受注があり、愛知県みよし市で販売中の一戸建ての大型分譲地でも導入されている。

経済産業省と国土交通省も2021年8月4日、災害時に電動車を「移動式電源」として活用するよう共同で呼びかけた。

(読売新聞 2021年8月6日掲載 編集センター・佐野寛貴)

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