台風の避難情報を地デジ波で!防災無線の補完考えTSBなどが実験

写真説明:長野県須坂市の豊洲防災コミュニティセンターで行われた実証実験

雨音で聞こえづらかった実態踏まえ台風19号の被災地で実証実験

地上デジタル放送のテレビ電波を活用し災害時の避難情報を伝達する実証実験が2021年12月、2019年10月の台風19号で被災した長野県須坂市北相之島地区で行われた。総務省消防庁が実施する事業の一環で、防災無線が聞こえにくいといった課題の解決を目指している。

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情報伝達実験の概要

実験は「避難指示」「緊急安全確保」などの情報を、テレビのアンテナ線をつないだ専用の受信機で受信するもので、この日は地区の消防団員ら4人が、自宅から参加。電波が発信されるとほどなく、「命の危険が迫っています」などの情報が、音声と文字で伝えられた。

写真説明:電波を受信すると、受信機が音声と文字で情報を伝える

19号では雨音で防災無線の音がかき消された

須坂市によると、台風19号の際、屋外に設置された防災無線の音が雨音にかき消されるなどし、住民から「放送が聞こえにくい」との意見が寄せられた。同様の問題が各地で相次いで指摘され、対策が急務となっている。

システムの特徴

このシステムは、テレビの地上デジタル波を活用するため、テレビが見られる場所であればどこでも情報を受け取ることが可能だ。小型の受信機は持ち運べ、付属のアンテナを伸ばせば外でも受信できる。乾電池でも動き、避難所や移動中の車内でも使える。

今回の実験は、消防庁から事業委託を受けた情報サービスのフューチャーリンクネットワーク(千葉県船橋市)、テレビ信州(TSB、長野市)と須坂市が共同で実施。技術開発には神戸市外国語大の芝勝徳教授(図書館情報学)も携わっている。

写真説明:芝教授

芝教授は「テレビの電波は非常時の情報伝達に有効で、受信機を室内に設置すれば情報が届きやすくなり、命が助かる可能性が高まる」と話す。

実証実験後の予定

同様の実証実験はほかに東京都と兵庫県、長野県内では長野市と軽井沢町でも行われている。この結果をもとに消防庁は技術の普及に向け、全国の自治体向けのガイドラインを2021年度中に作成する予定という。

(読売新聞 2021年12月10日掲載)

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