災害弱者の個別避難計画どう進める?ケアマネや民生委員の参加例を紹介

写真説明:2018年の西日本豪雨で浸水、多くの高齢者や障害者が亡くなった岡山県倉敷市真備町

命を救うために福祉の専門職も参加する!

災害時の避難に支援が必要な高齢者や障害者ら一人一人の「個別避難計画」を、ケアマネジャーや障害者の相談支援専門員など福祉の専門職も参加して作成しようという取り組みが自治体で広がりつつある。

これまで災害時の対策は、防災の担当職員や専門家が考えることが「常識」だった。しかし、それだけでは全ての命を救えないという考え方が背景にある。

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Case滋賀県高島市→ケアマネ参加

個別避難計画では、要支援者ごとに避難先までの支援の方法や手助けする人、持ち出し品などを事前に決める。2021年5月に改正された災害対策基本法で、計画の作成が市町村の努力義務となった。

滋賀県高島市では、病気で寝たきりとなった男性(66)の個別避難計画作りに、介護事業所「ふじの里ケアプランセンター」主任ケアマネジャーの杉本恭一さんが参加した。杉本さんは男性のケアプランを作り、心身の状態を熟知している。生活では妻(67)の介助が欠かせず、部屋の移動もままならない。近くの川には浸水のリスクがある。

2021年12月24日、男性の計画を議論するケース会議。集まった市の職員や近隣住民6人、男性の妻らを前に、杉本さんはこう言った。「奥さんの力だけでは命を救えません」

防災について詳しくないなら…

杉本さんは、福祉の仕事に30年近く関わるベテランだが、防災については知らないことも多かった。

一方で、男性の妻(67)からは「災害が起きたらどうすればいいだろう」と時折相談を受けていた。台風が近づいた時には男性を病院に一時入院させた経験もあったが、「いつも自分が関われるわけではない」と不安もあった。計画作りの責任の重さを感じつつ、災害時にはどんな対応が必要になるか勉強を始めた。

家族と一緒に点検することから

杉本さんは男性宅を訪れ、妻と一緒に災害時の備えを点検した。男性が避難する際にはたんの吸引器や常備薬など持ち出し品が多い。こうした荷物を抱えながら約150m離れた集会所まで避難するには、複数の手助けがいる。

寝たきりとはいえ男性は体幹が安定し、筋肉もある。大人2人が肩を持って介助すれば無理なく移動できる。「災害であることをしっかり本人に言い、具体的にどう避難するか伝えてください。移動の介助は常に本人の同意を得て行うこと」。男性の個別避難計画を議論する2021年12月のケース会議で、杉本さんがこう説明すると、参加した住民たちは「いざという時は私たちが手伝います」と応じた。

男性の妻は「災害のニュースを見聞きするたびに不安だったが、希望が持てた」と安堵(あんど)した様子で語った。

モデル事業として

高島市は2021年から、ケアマネジャーらに計画作りへの協力を求めるモデル事業を始め、男性で2人目。担当者によると、5年間で約200人の計画を作る予定で、協力するケアマネジャーらには1件の計画あたり7000円の報酬(委託費)を支払う。

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