南海トラフ地震対応!先進自治体は「事前復興計画」を作っている

写真説明:事前復興の勉強会で講師を務める井若和久さん(2021年12月、高知市で)

被災してから着手するのでは遅い

南海トラフ地震で地盤沈下と液状化が起き、最大約5mの長期浸水が想定される高知市下知地区。「被災してからでは遅い。今から復興計画を練っておく必要がある」。下知地区減災連絡会副会長の西村健一さんらの呼びかけで2021年12月、事前復興計画の勉強会が開かれた。

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事前復興とは

事前復興とは、被災後のまちづくりをスムーズに進めるため、日頃から地域の将来像や復興方針を検討しておく取り組み。阪神大震災(1995年1月)で復興に住民の意向が反映されず、行政主導でまちづくりが進んだことを教訓に必要性が指摘されてきた。

勉強会には、徳島県美波町由岐湾内地区で事前復興計画の策定に取り組んできた徳島大学人と地域共創センター学術研究員の井若和久さんを講師に招き、約30人が参加した。

由岐湾内地区は南海トラフ地震で最大12・3mの津波が想定される。計画では住宅を高台に移転する場合の候補地を絞り込むとともに、土地利用計画の素案をまとめ、町に提言した。

ポイントは住民主体

下知地区の勉強会で井若さんは高台移転の資金確保を課題に挙げながらも、「住民が主体となってまちの将来像を描き、実践していくことが重要」と強調した。

下知地区でも「楽しく安心して暮らせる、災害にも強いまち」を基本理念に住民らが計画を策定。公園の整備や盛り土した場所への学校の移転、堤防の強化などを盛り込んだ。西村さんは「長期浸水したら復興を考える余裕はなくなる。美波町のように事前に議論を重ね、計画を具体化して行政にも働きかけていく」と語る。

津波で最大18mの浸水想定

同地震の津波で最大18mの浸水が想定される高知県黒潮町佐賀地区も危機感は強い。沿岸部の区長12人が2021年4月、被災後の復興の基盤となる高台の造成を願う要望書を町に提出。若者らによる「事前復興デザイン」づくりに向けた協議会の設置も求めた。

写真説明:津波で最大18mの浸水が想定される高知県黒潮町佐賀地区の沿岸部

代表の村越豊年さんは「高台があれば避難場所にも仮設住宅の建設場所にもなる。造成だけならできるのではないか。何もしないで津波が来るのを待つわけにはいかない」と訴える。松本敏郎町長は「将来の町のあるべき姿を住民と考えていく。そうしないと町を離れる人が増えて過疎が進む」と話す。

高知県も市町村を後押し

高知県は市町村が事前復興計画をまとめる際の指針を2021年度中に示す。京都大防災研究所の牧紀男教授は、被災者の生活再建や街の再生など復興の手順、街の中心をどこに置くかなど土地利用計画の図面を盛りこむべき事項に挙げる。そのうえで「まず復興の全体像を描き、仮設住宅の建設地、がれきの処分場を決めておくなど被災前にできることから取り組んでほしい」と指摘している。

(読売新聞 2021年12月22日掲載 高知支局・古谷禎一)

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