災害時の外国人支援!横浜や川崎の多言語情報発信の取り組み

写真説明:外国人も参加して行われた防災訓練(2021年11月、川崎市で)

地震だけではなく風水害でも「災害弱者」になりやすい

言葉の壁などで「災害弱者」になりやすい外国人をサポートするため、神奈川県内の自治体が模索を続けている。約160か国、約10万人の外国人が暮らす横浜市は2021年秋、台風被害の激甚化を踏まえ、従来の地震に加えて風水害でも、災害情報の発信拠点を設置することを決めた。ただ、万が一のとき、支援の手が届かない心配は残り、地域ぐるみで外国人を見守る必要がありそうだ。

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日常会話不自由なくても防災に不安

2021年11月、川崎市幸区などが初めて主催した「多文化防災訓練」。幸市民館でアメリカやボリビア、中国などの外国人7人が起震車での地震体験、AED(自動体外式除細動器)や消火器の使い方、救急車の呼び方を学んだ。

参加したバングラデシュ人のモラ・エムディ・マスドさんは来日約30年で、区内で一人暮らし。日常会話には不自由しないが、最寄りの避難所を知らず、食料備蓄の大切さも把握していない。「どこに連絡すれば助けてくれるのか教えてほしい」と不安を漏らした。

横浜・外国人向けに防災のための特設コーナー新設

災害時、外国人にはいくつもの壁が立ちはだかる。横浜市国際交流協会(YOKE)によると、まず、「高台避難」「炊きだし」といった災害時特有の言葉が分からない。出身国によっては地震の経験がない人もおり、避難所など防災知識も不十分だという。

横浜市とYOKEは2009年、こうした外国人向けに震災情報を多言語で発信するセンター設置に関する協定を結び、2021年11月、支援範囲を風水害にも広げた。1月には、外国人にも理解しやすい「やさしい日本語」で防災のための特設コーナーをYOKEのホームページ(HP)に新設した。

説明:横浜市国際交流協会(YOKE)が新たに設けた外国人向け災害情報サイト。YOKEのHPにあるバナーからアクセスする

◆災害時の外国人への主な支援(横浜市)

川崎・2019年の台風19号時の知見活用

川崎市国際交流協会は、多言語の支援センターを開設した実績がある。2019年10月、台風19号の襲来を受け、市の避難勧告・指示を「やさしい日本語」を含む多言語に翻訳し、ホームページや地元FM放送で発信した。だが、支援センターを利用するように市の担当部署や各区を通じて避難所に呼びかけようとしたものの、混乱もあって徹底できなかったという。

運営する市国際交流協会の北沢仁美事務局長は「初めての設置で慣れない面があった。支援から漏れる外国人が孤立することが一番怖いので、日頃から地域とつながりを持ってもらいたい。協会もブログやSNSで防災知識を発信していく」と話す。

◆災害時の外国人への主な支援(川崎市、相模原市)

避難所運営にも配慮必要

横浜市は大きな災害が起きたとき、約460か所の避難所を設ける計画だ。市地域防災課の川島正裕課長は「研修を通じて、避難所を運営する住民に外国人が身を寄せる可能性を伝え、食料配布を館内放送ではなく直接伝えるなど、配慮事項を徹底する必要がある」と話す。

(読売新聞 2022年1月9日掲載 川崎支局長・五十嵐英樹)

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