東日本大震災の教訓取り入れたアイデア評価
帝京大理工学部(宇都宮市豊郷台)情報電子工学科の学生チーム(=写真)が2021年12月、電子部品を使ったものづくりの大会「国際イノベーションコンテスト世界大会」で2位となった。地震の際、売店に陳列された飲料などの瓶が、棚から落ちるのを防ぐ装置で、東日本大震災などの教訓を取り入れたアイデアが評価された。
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国際イノベーションコンテスト世界大会とは
同大会は2009年度から毎年開かれており、中学生から大学院生までが対象。センサーなどの電子部品を使った作品を競い、社会への貢献度や商業的な価値、チームワークなども審査される。
帝京大からは蓮田裕一教授と、蓮田教授の研究室に所属する4年の飯田雅裕さん、3年の浜崎圭亮さん、マレーシア人留学生のムハマド・シャヒルさんの3人が参加した。
発明した装置の概要
作品は幅80cm、奥行き30cm。瓶を置いた棚の上部に取り付ける装置で、気象庁の緊急地震速報を受信すると、フレームが自動で降下し、商品を固定する仕組みだ。急な地震に備え、震度5弱以上の揺れをセンサーで感知した場合も、フレームが作動するようになっている。
写真説明:装置を棚の上部に取り付けたところ。緊急地震速報の受信などによって、上部のフレームが自動で降下し、商品を固定、落下を防ぐ
発案したのは蓮田教授。東日本大震災などの大地震では商品が散乱し、店の再開に早くても半日はかかったと聞き、「店の損害が大きいだけでなく、営業再開が遅れて被災者が生活必需品を買えなくなる」と考えたのがきっかけだ。
写真説明:地震の揺れで瓶が落下して割れ、中の液体が床にこぼれた小売店の様子
今回の応募作品は改良版だった
初期の作品は、大学生などを対象にした2019年度の「発明・工夫作品コンテスト」で、最優秀賞にあたる「学会長賞」を受賞。ただ、このときは棚からの落下は防げたが、商品同士が衝突してしまうという課題が残った。
そこで今回、フレームにネットを結んで仕切りを作り、瓶を1つ1つ固定できるように改良。さらに、降下したフレームが客の手に当たることも考え、アルミ製の軽い材料を使った。停電を想定し、モバイルバッテリー方式を取り入れた。
コンテストでの経過と評価
完成した作品は、国ごとの事前の審査を通過し、2021年4月の国内大会で12チーム中2位に。世界大会は2021年12月19日にオンラインで行われ、中国、ドイツ、スイスなど5か国16チームが発表した中で、2位という好評価を受けた。
チームリーダーの飯田さんは「コロナ禍でチームが集まれずに苦労したが、それでも協力し合うことができた」と喜び、浜崎さんは「地震を再現する機械で商品が落ちないか試すなど、ベストを尽くした」と振り返った。シャヒルさんは「日本に来て初めて地震の怖さを知った。こうした商品をいろんな国で使ってもらいたい」と話していた。
写真説明:作品が世界大会2位となった帝京大の(左から)シャヒルさん、飯田さん、浜崎さん、蓮田教授(2021年12月、宇都宮市の帝京大で)
(読売新聞 2022年1月15日掲載 宇都宮支局・舘野夏季 ※学年は掲載当時)
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