高層ビルに職場がある企業向け!防災担当者が知っておきたいオフィスの地震対策

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地震の影響は、建物の「形状・規模・構造の違い」などの条件によって大きく異なり、対策も建物の条件や利用状況ごとに違ってきます。
高層ビルにオフィス(事務所)がある場合、企業の防災担当者は地震対策を講じる上で、「建物構造の特性把握」「高層オフィスビルならではの地震対策」の2つの視点を持つことが大切です。本記事では、高層ビルにあるオフィス(事務所)を対象として、主に企業の防災担当者が知っておきたい地震対策について紹介します。

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建物の「素材」「地震対策」の特性を把握

地震対策を考える上で欠かせないのが、自社のオフィスが入居する建物の特性を理解しておくことです。特に重要なのが、建物構造の特性です。
建物構造には大まかに「素材(建材)」と「地震対策」の2つの要素があります。

素材(建材)の種類とそれぞれの特性

現在、高層ビルに用いられている素材(建材)構造には「鉄骨造(S造)」と「鉄筋コンクリート造(RC造)」があります。防災対策上、知っておきたい特徴は以下のとおりです。

●鉄骨造(S造)
・地震動(特に長周期地震動)に対して、建物全体が大きく揺れやすい
・大規模火災が生じた場合、建物崩壊(部分的も含む)の可能性がある

●鉄筋コンクリート造(RC造)
・地震動に対して、大きな揺れは抑えられるものの、激しい揺れに感じやすい(ガタガタと大きな音がするため、揺れが激しいと感じてしまいやすい)
・大規模火災があっても、建物崩壊は起こりにくい

ちなみに近年、一部木造を使用した高層ビルが完成したほか、最新技術を用いた「純木造」の高層ビルの建設も進んでいます(2022年3月現在)。今後は「木造」も考慮すべき要素となっていく可能性があります。

地震対策の種類とそれぞれの特性

現在の高層ビルの建物構造は3種類あり、それぞれ地震対策の仕組みが異なります。

●耐震構造の高層ビル
簡単に言うと、地震に対して建物の頑丈さ(強度)によって耐える仕組みを持っています。最も一般的です。

●免震構造の高層ビル
地震の揺れを建物(躯体)に伝わりにくくする仕組みを持っています。主に地盤と基礎を構造的に分離して免震させる装置を設置しています。地震の揺れ(横揺れ)が地盤から建物(基礎)に伝わりにくくしています。ただし「縦揺れ」は直接、振動が伝わります。

●制震構造の高層ビル
建物の主要部分に制震装置(制震ダンパーなど)と呼ばれるパーツ・装置を設置しています。地震の揺れを上手に制御して建物の揺れを小さくする(揺れにくくする)仕組みを備えています。

建物構造別の地震対策

建物の素材と地震対策を踏まえて、それぞれのケースでの地震対策を紹介します。

●「鉄骨造(S造)」の場合
大規模火災による建物倒壊(部分倒壊)の可能性を念頭に置く必要があります。
火災発生の有無確認と並行して、「一時屋外避難の誘導」を防災計画に盛り込むことを考えてください。

●「鉄骨造(S造)」+「耐震構造」の場合
「長周期地震動」の影響で、遠方での大規模地震でも大きく揺れる可能性があります。
例えば地域の震度が4であったとしても、当該高層ビルでは震度6相当となるケースがあります。気象庁発表の「震度」情報のみにとらわれない防災計画を立てておきましょう。

●「免震構造」の場合
直下型大規模地震が起きて大きな縦揺れが生じたとき、建物がダメージを受けることがあります。免震構造であっても、構造の特性から縦揺れへの対策を考慮しておく必要があります。

また「免震構造」の場合、本震によって免震機能自体がダメージを受ける可能性があります。ダメージを受けた場合、著しく耐震性能が低下します。大規模地震時には本震と同等規模の余震が発生することもあります。そのような場合は一時屋外避難が必要です。
避難後にビル管理者による免震システムの点検を待って安全が確認できてから、屋内帰還を促すような防災計画が必要となります。

●「制震構造」の場合
地震の影響(揺れ)はかなり抑制されます。そのため大規模地震発生時には、社員に対し、屋外避難を急がせるよりもパニックを招かないことを優先しましょう。
建物管理者(ビル管理者)と連携を取り、火災と建物損傷の有無の確認(周辺建物状況も含む)を実施。その後に、館内放送を重視した避難誘導や、被災状況報告を行うような防災計画を心がけましょう。

なお免震構造や制震構造の場合、免震装置・制震装置に劣化や故障のリスクが存在します。そのため、装置(免震、制震)の定期的な検査やメンテナンスが地震対策(防災計画)として必要不可欠です。
ビル管理者から定期的に「メンテナンス結果報告」を入手するようにしてください。

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