3.11の被災自治体職員の「気付き」を継承する取り組み事例

写真説明:各自治体が作成した東日本大震災の記録誌

震災対応で得た教訓を伝え、活用するために

東日本大震災で被災した自治体が震災対応で得た教訓をどう伝えるかは大きな課題だ。記録誌に職員の「気付き」を掲載したり、証言を収録したりと、独自の工夫を凝らす。残された教訓をどう活用するのかも今後の課題だ。

こちらの記事も読まれています→3.11岩手・大槌町職員40人はなぜ津波で亡くなったのか―町が検証報告書公開

大船渡市の記録誌

「仮設住宅の集会所は当初から設置するのが望ましい」「カウンセラーの確保に苦慮した。関係機関と連携強化の必要がある」

岩手県大船渡市が2021年に発行した記録誌の中にある「職員の気付き」コーナーに書かれた意見だ。「改善が必要なこと」「今後の災害でもいかせること」などをテーマに計64点の気付きが紹介されている。

改善点や課題の洗い出し

市は2018年度に記録誌の作成の検討を始め、成果だけでなく、改善すべき点や課題などを盛り込むことに重点を置いた。企画調整課の伊勢徳雄さんは「将来の災害で必要とされる情報は、今回の災害で至らなかった点のはず。復興の過程で得られた『気付き』を残そうと考えた」と話す。

街づくりに関わった市民や有識者の証言も掲載し、行政側だけの視点にならないように配慮した。

岩手県大槌町の検証記録

庁舎が津波にのまれるなどし、職員39人が死亡・行方不明になった同県大槌町は、記録誌の中で職員が犠牲になった背景を検証、現職・OB職員の証言や、専門家の分析を載せた。

11章で構成する記録誌は資料を含めて全255ページ。110を超える個人や団体からの聞き取りを行った。北田竹美副町長ら専従職員3人で編集するのに2年近くを要した。北田副町長は「マンパワーやスキルが足りず、問題提起にとどまり、分析や検証にまで踏み込めなかった部分もある」と振り返る。

宮城県の分野別インタビュー集

宮城県は2019年から、復興の最前線に立った約600人の職員を対象にした大規模インタビューを行っている。テーマは「住宅被害」「埋火葬」など約60分野。インタビュー日程は庁内で公開され、関心のある職員が参加して、質問をできるようにした。

2022年度までに終了し、報告書や映像を作る方針だ。宮城県復興支援・伝承課は「職員研修での活用方法を検討している」とする。

◆自治体の教訓を伝える主な取り組み

(読売新聞 2022年3月4日掲載 東北総局・松下聖、鶴田裕介)

<関連する記事はこちら>
3.11発生直後の道路復旧 「くしの歯作戦」はこうして遂行された

この記事をシェア

記事一覧をみる

防災ニッポン+ 公式SNS
OFFICIAL SNS

PAGE
TOP