災害時「AIリアルタイム危機管理情報サービス」のすごさ!

(画像提供:スペクティ)

災害の状況をAIによる解析でリアルタイムに可視化する「AIリアルタイム危機管理情報サービス」が登場しています。気象情報や公共データ、SNS投稿などさまざまな情報を瞬時に解析し、状況判断に活用しやすい形で可視化するツール「Spectee Pro(スペクティプロ)」です。
サービスを提供している「スペクティ」CEOの村上建治郎氏に、内容や活用例などを取材しました。

こちらの記事も読まれています→Agoopの人流データ災害時活用!AIで異常検知も可能

現場の情報がリアルタイムで可視化される仕組み

日本気象協会や福井県と進める実証実験から

スペクティプロは具体的にはどういうサービスなのか、最新の実証実験の様子から紹介します。大雪の時に起きうる車両の滞留(スタック)を、AIで事前に検知して予防対策に活用するもので、2020年12月から日本気象協会と福井県との合同で研究が進んでいます。

事前検知はこのような仕組みです。
まず降雪量や積雪深などの気象情報のほか、路面の凍結具合や圧雪状態などの情報を、道路カメラや車載カメラから収集します。

道路カメラは国道や高速道路などの道路に設置されたカメラで、映像が常時センターサーバーに伝送されます。また車載カメラの映像はモバイル通信のLTE回線を通じてデータ転送されます。データを受け取ったサーバー側でそれらのデータを統合し、AIにより解析しているのです。

ほかにも多くのデータを収集しています。自動車関連の各社が提供する走行台数や走行速度のデータ、SNSなどです。SNSは各社とAPIで連携しており、投稿情報を、インターネット上の共通仕様になったデータにして常時取り込むのです。

数にすると、福井県内の道路カメラで約200台、SNSデータは1日あたり数億から数十億件にのぼります。
それら膨大なデータをAIで瞬時に解析し、道路通過にかかる時間を割り出します。その割り出した数値によって、スタックが起きそうかを事前判定するのです。

道路カメラ・車載カメラと気象データの分析イメージ(画像提供:スペクティ)

――リアルタイムで災害情報が可視化される仕組みを説明ください。

スペクティプロが収集するのは、地震、津波、台風、大雨、土砂災害などの気象データや、河川や道路に設置されたカメラ画像から配信されているデータ、人工衛星データ、自動車に設置された走行・カメラデータ、人流データ、SNS投稿で覚知された事故や火災などの情報です。これらをAIにより24時間絶え間なく収集し、リアルタイムで解析します。

SNSはAIのほか専門スタッフが24時間体制で監視と精査も

特にSNS情報については、Twitter、Facebook、Instagram、YouTube、TikTokなどからテキスト・画像、動画を収集し、情報を吸い上げています。情報の正確さを確保するため、AIによる解析だけでなく、専門スタッフ約20名による情報の監視と精査を24時間体制で行っています。

こうして収集した各種データから、災害状況を判定する「検知モデル」を構築します。冒頭で紹介した実証実験を例にすると、降雪・積雪状況と道路や車載情報などを元に車両スタックが起こっているか、今後どのくらい起こりそうかを検知するアルゴリズムを構築するわけです。
検知する事象は100以上のカテゴリーがあります。地震、洪水、土砂災害、大雪といった自然災害の発生のほか、火災や大きな事故などの情報も検知することができます。

これらの情報収集、分析、配信のプロセスをAI解析で行い、その結果を、ひと目でわかるような地図やグラフ、画像配信といった形に可視化して配信します。情報収集から配信までにかかる時間はわずか1分から数分。このようにして現地の災害情報がリアルタイムに可視化されていくのです。

――「配信」というと、企業や自治体はどのような情報をどう受け取るのでしょうか。

スペクティプロが配信する情報は、インターネットにつながっているパソコンがあれば利用できます。ブラウザでスペクティプロにアクセスし、IDとパスワードでログインするだけです。
100以上のカテゴリーから気象・災害や火災・事故・事件といった事象別で検索でき、さらに高速道路や河川といった対象を絞り込むこともできます。

AI解析した情報を写真付きで地図上に表示した画像イメージ(画像提供:スペクティ)

また情報を写真つきで一覧表示したり、地図上にマークで表示し、今どこで何が起きているのかを俯瞰したりすることもできます。マークを押せば詳細内容もわかります。その他、時系列での数値の変化や内訳などをグラフでみることも可能です。

分析結果の表示パターン画面イメージ(画像提供:スペクティ)

スペクティプロの特徴と活用例

スペクティプロは、「これまでに起きていること」「現在の状況」「今後の見通し」をAI技術で整理し、災害対応に必要な情報のとりまとめを瞬時に行います。そのため、利用者側はニュースなどの報道を個別に集めるより断然早い判断や対応につなげることができます。

例えば企業の場合、災害や事故が発生した周辺地域にいる従業員にいち早く情報提供し、安全を最優先とした行動をとるよう促すことができるでしょう。
また物流会社では、災害情報を地図上で確認して被害箇所をいち早く把握し、そこを回避した配送ルートを設定するといった判断に役立てることができます。

またスペクティプロは、海外の災害や大規模事故、テロ、軍事クーデターなどにも対応します。各地の拠点やサプライチェーンなどの関係先を登録しておき、グローバルリスクに対してもすばやく初動対応をとることが可能です。

――どのような組織・機関がスペクティプロを活用していますか。

都道府県庁の防災局や市区町村、政府・官公庁、警察・消防といった公共機関に採用されています。報道関係では多くのテレビ局や新聞社などに導入されています。
民間企業では、鉄道・高速道路・通信といったインフラ関係のほか、サプライチェーンの管理が必要な物流・製造部門、日用品や食品の流通部門といった業界で採用いただいています。
提供する情報や表示形態は、利用目的や組織の規模によって異なり、柔軟に対応しています。

AI解析で被害状況はどこまで予測できるか

――AIによる解析では「予測」もできるそうですが、具体的にはどのようなことが予測できるのでしょうか。

「リアルタイム3D浸水推定マップ」では、SNSに投稿された画像から現在の状況を可視化し、さらにその先の被害範囲の拡大を、10分後、30分後、1時間後といった具合に予測するシミュレーションができます。

10分後の予測を10分以内にGoogle Earth上に3D出力

降水量、地形データとSNS投稿の画像を掛け合わせ、浸水深と浸水域を自動解析するのです。分析結果はGoogle Earth上に3D出力します。10分以内に自動生成されるため、ほぼ災害の進行そのまま、リアルタイムに予測ができるようになっています。

Google Earth上にリアルタイムで予測結果を出力する仕組みのイメージ(画像提供:スペクティ)

ハザードマップで見慣れた地図の形で浸水深と浸水域の広がりを俯瞰することもでき、これからどこに被害が出そうかを把握し、事前対策を的確に進めることが可能になるのです。

精度が高まれば事前避難の呼びかけにも

他にも、初めに紹介した大雪のシミュレーションの実証実験など、スペクティプロでは、さまざまな研究機関や自治体と共同して情報解析の精度を高める開発を進めています。予測の精度がさらに高まれば、被害が及ぶ可能性のある地域へ事前に避難を呼びかけるなど、活用の幅が広がるでしょう。

<メモ>
Spectee:https://spectee.co.jp/
東京都千代田区五番町。2011年創業。「危機を可視化する」をミッションに、国内トップシェアの防災・危機管理ソリューション『Spectee Pro』を提供。災害関連情報をリアルタイムに配信するほか、AIによる被害のシミュレーションや予測を行う。

<執筆者プロフィル>
南部優子
防災ファシリテーター。
研修・訓練による人材育成や教材作成など、組織対応力の総合的な強化を図る業務の企画・運営多数。内閣府、地方自治体、公的企業体、NPO法人などが実施する防災・BCP研修の講師としても活躍。

<関連する記事はこちら>
災害時の仮設はコンテナで 業者と自治体に協定広がる

この記事をシェア

記事一覧をみる

防災ニッポン+ 公式SNS
OFFICIAL SNS

PAGE
TOP