第1回防災キャラバン 「東日本大震災から10年の現状について」

東日本大震災から10年を迎え、自治体、企業、大学、研究機関などから専門家をお迎えし、防災に関するオンラインセミナー「防災キャラバン」を全4回にわたって開催しました。1月29日開催の第1回は「東日本大震災から10年の現状について」をテーマに、宮城県知事 村井嘉浩氏、株式会社ワンテーブル 代表取締役 島田昌幸氏、東北学院大学 教養学部 地域構想学科長 柳井雅也氏をお迎えし、東日本大震災から10年が経過した今、日本はどのように変化してきたかについてお話を伺いました。

<今回のポイント>




1.東日本大震災から10年で見られた変化

東日本大震災をきっかけに、それまでの日本の防災に関する意識は大きく変わりました。震災後10年の間に、大きく3つの変化が見られています。

 

● ハード面
・災害に強いまちづくり
津波被害が特にひどかった沿岸部を中心に、災害に強いまちづくりが進められました。居住地の見直しや変更はもちろんのこと、高台を内陸部に移転して防潮堤の整備を行う、津波避難ビルを建てるなどのさまざまな取り組みと配置が行われています。また、それと同時に津波に対する耐性を高めるための拠点施設の整備と、建築物の耐震化も一気に進めています。

 

・広域防災拠点の作成
仙台市中心部の宮城野原地区には広域防災拠点をつくることを検討し、現在も整備を進めています。東日本大震災時に支援物資がさまざまな場所に届いてしまい、統制が取れなかったことが教訓となり、拠点を市の中心部のわかりやすい場所につくることを目的としています。

 

●ソフト面
・情報の収集・伝達手段
東日本大震災時に拠点であった役場や市役所も津波被害にあってしまったため、全く情報が集められなかったといいます。そのため、防災行政無線を新たに設置し、情報を収集できる場所の多重化に努めました。現在は、各現場の情報をすぐに送れるような仕組みがつくられています。

 

・情報取得のための電源確保方法が増加
情報収集のためには、スマホやパソコンなどが欠かせないアイテムであり、それらを利用するためには電源を確保する必要があります。しかし震災では停電が発生することを前提に考えねばなりません。このことから、電気自動車やハイブリッド車などの車から長時間にわたって電源が取れるような仕組みができてきました。

 

・現地での必要な物資や情報整理が大切
現地のニーズは日々変化するため、情報整理をおこなう必要があります。しかし、震災の混乱時に、自治体や行政だけで全てに対応するのは難しかったのです。ニーズがある場所にピンポイントで物資を送るために、民間の協力や支援を得られる体制づくりが進められています。

 

●人々の意識
東日本大震災は阪神・淡路大震災と比べると、ボランティアが多かったといいます。阪神・淡路大震災ではボランティアが来てくれたものの、ボランティアの人たちの食事や寝床などが確保できないという問題が起こっていました。しかし、東日本大震災のときにはボランティアをサポートする団体ができており、阪神・淡路大震災のような問題は起きなかったのです。サポート団体が、ボランティアとして来た人たちをマネジメントしたことが、スムーズなボランティア活動につながったといえます。

 

●緊急時に必要な判断
震災時は市内中のガソリンスタンドはどこも混んでいたため、緊急車両のガソリンの補充が困難になりました。そこで、村井知事は高速道路のガソリンスタンドは緊急車両などの決められた車両しか利用できないように車両通行証を発行したのです。また、合わせてボランティアの車も使用できるように許可し、これによりボランティアも活動がしやすくなりました。

2. 今後の取り組み

東日本大震災からまもなく10年がたとうとしている今、これまで国や自治体が主体となって行ってきた取り組みに加えて、民間企業や地域の取り組みも期待されています。

 

●民間企業の取り組み
多くの民間企業で、防災をテーマにさまざまなアイテムの開発が行われています。これらのアイテムは、災害時だけでの使用を想定するのではなく、平常時でも使えるという視点となっています。

 

事例1)㈱吉田工業がJAXAと共同開発したエアクリーンテント
災害やウイルス感染での体調不良者を隔離することができるテントです。最近では、コロナ禍による発熱外来でも使用されています。

 

事例2)㈱メイクアップが開発した除菌スプレー
香水を取り扱うメーカーが開発したアルコール濃度70%のアイテムです。スプレーとハンドジェル、ハンドミストの3つのタイプがあります。不衛生になりがちな災害時やコロナ禍での除菌に使われています。

 

事例3)ベル・データ㈱が開発した備蓄マネジメントシステム
全国の備蓄情報をデータ化し、共有できるシステムです。リアルタイムでどの倉庫に、どんな備蓄があるのかを把握することができるため、支援のしやすさにつながります。

 

他にも、F1技術を生かして、保育園などで使われるリヤカーが開発されています。子ども数人が乗っても簡単に移動できるため、公園などへ散歩に行くときに保育士の負担が減ることも期待されています。

 

このような緊急時だけでなく平常時にも使えるアイテムは、コスト削減にもつながるのです。

●地域の取り組み
宮城県では、土砂災害などが起きやすいエリアの情報を提供できるような仕組み作りを構想しています。このような情報を提供することで、自分で自分の命を守れるようになり、災害時の被害を最小限に抑える効果が期待できます。また、利用者の多いSNSを活用して、各々が情報提供を行うことも減災のために重要であると考えています。

 

●他の周辺地域との連携も大切
災害時には周辺地域との連携も重要であると、村井知事は考えています。そのため、宮城県では、被災地の職員とともに若手職員にも震災時の情報やノウハウを共有する体制を整えているのです。実際に他の地域で災害があった場合は、すでに東日本大震災を経験した職員に若手職員を同行させて現地に赴いています。

 

● 法律を超えた対応も必要なケースもある
災害が起きたときの非常時には、臨機応変な対応が必要なケースもあるといいます。実際に東日本大震災のときには、仙台港の製油所が被災し、灯油やガソリンが使えなくなりました。後に、大きな灯油タンクの栓を抜けば、灯油が出てくることが判明しました。これを避難所に持っていこうとしても、特定の薬剤が入っていないと使えない上に、違法になってしまうことが問題でした。村井知事が経済産業省に申請し、許可を得て使用することができました。

 

このように災害時には、法律を超えた対応を求められるケースがあるということを覚えておくことが大切です。

まとめ
東日本大震災から10年間、宮城県を中心に、地域・行政・企業の三者間でさまざまな取り組みが行われてきました。しかし震災はいつ発生するかわかりません。いざというときに備えて、今後も他の地域と連携しながら防災対策を進めていく必要があるのです。

<動画で見たい方はこちら>

【主催】 経済産業省 東北経済産業局、 読売新聞社
【共催】 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA)・ J-SPARC
【協力】ベル・データ 株式会社
【委託事業者(事務局)】株式会社ワンテーブル
【テーマ、出演者】
・第1回「東日本大震災から10年の現状について」
・宮城県知事 村井嘉浩氏
・株式会社ワンテーブル 代表取締役 島田昌幸氏
<コーディネーター>東北学院大学教養学部地域構想学科長 柳井雅也氏

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