第3回防災キャラバン BSFP(防災と宇宙プロジェクト)の目的と意義

宇宙飛行士が滞在する宇宙環境と被災地の生活環境は、閉鎖空間であったり、使える水が限られたりするなど、極限状態という部分で共通点があります。2021年2月12日開催の第3回では「BSFP(防災と宇宙プロジェクト)」をテーマに、宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 J-SPARCプロデューサー 菊池優太氏、株式会社ワンテーブル 代表取締役 島田昌幸氏、株式会社日進産業 代表取締役 石子達次郎氏、株式会社メイクアップ 代表取締役 伊藤治氏をゲストにお話を伺いました。

<今回のポイント>

1. BSFPとは

「BSFP」 とは「Bosai Space Fulfillment Project」の略で、宇宙知見を活用した新しい防災ソリューションの創出を目指すプロジェクトの略称です。宇宙飛行士が滞在する宇宙環境と、被災地の人々が避難所などで過ごす生活環境は、極限状態という部分で共通点があります。閉鎖的な空間や栄養不足などの健康問題、限られた水や電気、ガスなどのインフラ制限、精神的なストレスなどが、どちらの環境においても大きな課題となっているのです。

このことに注目して宇宙を起点にアイデアを生み出し、防災に役立てていくプロジェクトがBSFPです。今、災害時ニーズと宇宙ニーズを合わせ、新しい商品を開発していく動きが活発に進められています。

BSFPが進めている事例を食・生活・教育の3つの分野からご紹介します。

● 食
日本人は1日で1人平均300リットルの水を使いますが、国際宇宙ステーションでは1日1人約3.5リットルで生活しなければなりません。また、被災地ではカロリー補給が優先された物資補給によりビタミン不足が課題となっています。

このような宇宙と被災地共通の食の課題に着目し、株式会社ワンテーブルが開発したのが、水のいらないゼリー食「LIFE STOCK」です。また、宇宙の無重力環境ではのどの渇きが感じづらいことから着想を得て、熱中症対策などを想定した水分補給ゼリーも製品化しています。

● 生活
避難所では、空気の汚れが一般家庭の20倍以上になってしまうことが問題視されています。また隔離された宇宙空間でも空気清浄技術は重要なことから、株式会社吉田工業はクリーンな空気を保つ「ツバメエアクリーン」を開発しました。被災地や医療現場での活用が期待されています。

● 教育
宇宙環境と避難所での暮らしの共通点を探し、解決策を考えるプロセスは教育現場でも活用できます。JAXAでは、防災教育の導入部分に宇宙飛行士の暮らしの授業を取り入れることで、防災へ興味をもってもらったり、意識や行動が変わることにつながればと考えているのです。こうした宇宙生活からの学びを教育に役立てる取り組みは、全国各地で広がっています。

2. BSFPにおける企業の取り組み

企業においてもBSFPに向けた取り組みがなされています。株式会社日進産業と株式会社メイクアップの取り組み事例を紹介します。

●株式会社日進産業
日進産業は15年前にJAXAと共同で特殊な塗料「ガイナ」を開発しました。ガイナは塗ることで暑さや寒さ、音、においが伝わることを防ぐ特殊な断熱塗料で、高温にさらされるH2ロケットの先端などに用いられています。

また、ガイナは全国各地の重要文化財にある宝物殿の塗料にも使われています。塗ることで湿度をコントロールし、中にある文化財を保存できるのです。

民家や倉庫、学校など、どんなものにも塗れるので、石子氏は、ガイナは防災にうってつけの素材だと考えています。被災時は電気や水、冷暖房が使えなくなることもあるため、ガイナを塗ることで暑さや寒さを防ぐこともできるそうです。また、近くで火災が起きた時にも、火が届くまでの時間が延長され、逃げる時間が確保できるといいます。

石子氏は被災者の中には言葉を発することのできない赤ちゃんがいることに目を向け、小さな命を守る技術をこのチームで開発していきたい、と今後の展望を語っています。

●株式会社メイクアップ
メイクアップは創業30年の化粧品会社です。コロナ禍で全国的にアルコール不足に陥る中、オリジナル香水の製造技術を生かして除菌製品を開発しました。500万本を販売し、医療機関にも採用されています。

災害時は断水が起こることもあるため水は大変貴重で、頻繁に手洗いはできません。今はコロナウイルスの影響もあり、除菌製品は欠かせないものとなっています。

使える水の量が限られる宇宙環境でも、除菌製品は必須アイテムです。メイクアップでは香水製造のノウハウを生かし、リラックスできるような香り付きの除菌製品の開発も手がけています。子どもが楽しく除菌を習慣化できるよう、イチゴの香りの付いた除菌製品を販売しているのです。ただし、教育現場や避難所、宇宙空間などの閉鎖空間では香りを不快に感じる人も多いことから、無臭の製品に対するニーズも感じているといいます。

伊藤氏は宇宙環境が乾燥していることに着目し、除菌しながら肌を乾燥から守るような製品の開発を進めたい、と考えているようです。

3. 新しい防災概念

地震や台風は日本中で起こる可能性のある災害です。今後、防災に対する意識は業界で線引きせず、ボーダーレスに取り組んでいく考え方が求められます。

宇宙や防災に役立つような製品をつくることはハードルが高いと感じるかもしれませんが、自社のモノづくり概念を変えることで、新しい商品が生まれる可能性が広がるそうです。JAXA菊池氏は、防災産業をつくることは並大抵のことではないと言います。実証し、社会システムとして根付かせる必要があるからです。しかしBSFPで多くの企業が連携することで、実現していけると考えています。

ワンテーブル島田氏は、平時の延長線上に災害時があり、平時の先に宇宙があるという視点が大切だといいます。「デュアル」をキーワードに、災害でも宇宙でも平時でも使えるものをつくっていきたい、と今後のビジョンを語っています。

また、メイクアップは、コロナ禍において商品を成長させています。防災と宇宙を掛け合わせた商品開発はビジネスチャンスでもあり、新しい概念そのものといえるでしょう。

まとめ

「BSFP(防災×宇宙プロジェクト)」をテーマに、各企業の取り組みや将来に向けた展望を伺いました。宇宙はまさにボーダーレスで国境がありません。BSFPの取り組みでは、今後も企業それぞれの強みを出し合って技術を掛け合わせ、課題に向き合いながら製品づくりを続けていくことが期待されます。

<動画で見たい方はこちら>

【主催】 経済産業省 東北経済産業局、 読売新聞社
【共催】 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA)・ J-SPARC
【協力】ベル・データ 株式会社
【委託事業者(事務局)】株式会社ワンテーブル
【テーマ、出演者】
・第 3 回「BSFP (防災×宇宙プロジェクト)の目的と意義 」
・宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 J-SPARCプロデューサー 菊池 優太氏
・株式会社ワンテーブル 代表取締役 島田昌幸氏
・株式会社日進産業 代表取締役 石子達次郎氏
・株式会社メイクアップ 代表取締役 伊藤治氏
<コーディネーター>JAXA J-SPARC 公式ナビゲーター 榎本麗美氏

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