「晴れの国」の災害史(3)風害 (連載)

写真説明:那岐連山にできた雲の「風枕」(岡山県津山市のホームページから)

50m超 「広戸風」猛威

9~10月、「広戸風」と呼ばれる局地風が、岡山県北東部の奈義町や津山市東部などを襲うことがある。山形県の「清川だし」、愛媛県の「やまじ風」と合わせて、「日本の3大局地風」の一つに数えられ、昔から住宅や農作物に多大な被害を与え、住民を苦しめてきた。

 

51・8m。2004年10月の台風23号の際、奈義町が観測した瞬間風速だ。県内では、杉やヒノキなどの人工林の倒木被害も広がり、その面積は計約5500ヘクタールで、被害総額は約65億円に上った。民家の多くも、屋根瓦が飛ばされた。

 

写真説明:2004年10月の強風で倒れた木々(津山市の勝北地区で)

津山市の勝北支所(旧勝北町役場)で瞬間風速51・5mを観測した17年10月の台風21号では、同支所の屋根の一部が壊れたほか、ビニールハウスの倒壊や牛舎の破損も甚大だった。

 

なぜ起きるのか。それは奈義町と鳥取県の境にある那岐山(標高1255m)が関係している。

 

四国沖を台風や発達した低気圧が通過する際、日本海から台風や低気圧に向かって風が吹く。

 

那岐山の鳥取側では千代川が日本海に注ぎ込んでおり、その川を上るように那岐山を越えた風が奈義町などに吹き下ろすのが広戸風だ。「おろし風」の一種で、兵庫・六甲山の六甲おろしと同じ発生メカニズムとされる。

 

奈義町周辺では古くから、「木背(こせ)」と呼ばれる広戸風対策が普及している。家屋のすぐ北側に雑木林や竹やぶを作るもので、防風林の役割を果たす。稲作も発生時期をにらんで早生(わせ)品種が選ばれており、畑でも根菜類が多く作られている。

 

町誌(1980年発行)には、広戸風が吹く前兆の自然現象について記述がある。それによると、▽「風枕」と呼ぶ、那岐山を覆うような雲が現れる▽「ドー、ドー」と山鳴りが始まる▽北方から低空の雲が南に進み、微雨が断続する――などで、住民にとって厄介者だったことがわかる。

 

同町の理容師定森幸俊さん(40)は、「広戸風が吹き始める前には、自宅北側のシャッターが剥がされないよう軽トラを横付けしている。風が吹き出すと、何が飛んでくるかわからず、危険だから外出は絶対にできない」と語った。

 

気象庁では、台風が近づく数日前からスーパーコンピューターなどで風速を予測している。岡山地方気象台の浜子訓志さんは「秋の台風シーズンが本格化する。備えを着実に進めてほしい」と話している。

 

(読売新聞 2020年8月20日掲載)

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