地震保険は必要?内容と契約のポイント

地震保険は生活再建の備え

地震災害の多い日本だが、「保険料が高い」というイメージもあり、地震保険に加入していない人も少なくない。万が一の備えとして、補償内容や契約する際のポイントを専門家に聞いた。

火災保険とセットで

「津波は来ない場所だし、最近の住宅は揺れに強そう。被災者への支援制度もありそうだから、入らなくてもよいかなぁ」。関東地方で新築戸建てを購入する30歳代の夫婦は地震保険への加入を迷っている。

 

住宅ローンを組む時や、賃貸物件への入居の際に加入を求められる火災保険では、地震の被害は補償対象外となっている。ファイナンシャルプランナーの石川英彦さんは「地震保険は官民共同で運営し、甚大な被害が出ても、国が支払いを約束してくれる公的制度に近いもの。貯蓄に余裕がある世帯でない限り、加入した方がよい」と話す。

 

地震が原因の火災や津波、土砂災害などで住宅が全損した場合、国の「被災者生活再建支援制度」が適用されると、1世帯最大300万円が支給される。住宅ローンの返済が困難な場合、ローン残高の減額や低金利の融資制度もある。

 

ただ、これだけでは、持ち家を失って住宅ローンだけが残り、生活の立て直しが難しくなる人も多い。そこを補うのが、地震保険だ。

 

地震保険は火災保険とセットで加入する。火災保険に後から付帯することもできる。保険料は、地震の被害のリスクによって、都道府県や建物の耐震性能などで異なる。補償内容や保険料は、どの損害保険会社から加入しても変わらない。

※地震危険度が低い方から1~3等値に都道府県を分類
(2019年1月~20年12月に契約した場合。石川さん試算)

家財の補償も

選択の余地があるのは保険金額だ。まずは建物と家財、両方を補償してもらうか、どちらかだけにするかだ。建物は無事でも、食器や冷蔵庫、テレビなどが壊れることはしばしばある。

 

現金や車、一つ30万円を超える貴金属などの被害は補償の対象外だが、家財の方で保険金がおりれば、生活再建の足しにできる。

 

保険金額は火災保険の金額の30~50%の範囲で選べる。例えば、火災保険で建物の評価額が2000万円、家財300万円となっていた場合、地震保険は建物600万~1000万円、家財90万~150万円の間で設定する。当然、希望する保険金額が高い方が保険料も高くなる。

 

建物、家財がそれぞれ、地震災害に見舞われて「全損」と鑑定されれば、設定した保険金額の100%、「大半損」で60%、「小半損」で30%、「一部損」で5%を受け取れる。保険金の使い道は自由だ。

 

注意したいのは、全損になっても受け取れる保険金額だけでは建物の再建は難しい点だ。石川さんは「地震保険の目的は建物の再建ではなく、生活の再建だから」と説明する。

 

地震保険とは別に少額の地震補償保険や、金利を上乗せすることで被災時に返済が一部免除される住宅ローン特約などもある。「ローン残高が多い」といった不安があり、手厚く備えたい人は検討するのも手だ。

控除の対象 税金安く

地震保険の普及を促すため、国は税制上の優遇措置を設けている。

 

税金を計算する際、所得税なら保険料の全額(年間の上限5万円)、住民税は半額(同2万5000円)を、所得から差し引くことができる。控除と呼ばれる仕組みで、税金がかかる所得の額が少なくなれば、税金も安くなる。

 

例えば、5年契約で20万円の地震保険料をまとめ払いした場合、1年分の保険料は4万円。控除額は所得税が4万円、住民税が2万円となる。所得税率が20%、住民税率が10%の人の場合、単純計算だが、年間に支払う所得税が8000円、住民税が2000円安くなるイメージだ。

 

2021年1月からは保険料が改定されるので、加入を検討中の人は、自分の暮らす都道府県の改定内容を確認しておきたい。

アドバイザー 石川英彦さん
1968年、愛知県生まれ。ファイナンシャルプランナー、個人向けの金融コンサルティング会社「金融デザイン」社長。共著「自然災害に備える! 火災・地震保険とお金の本」(自由国民社)では、印税を全額寄付する企画を実施している。

 

(読売新聞 2020年11月12日掲載 社会保障部・田中ひろみ)

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