災害時に影響を受けやすい高齢者の健康ケアの方法

写真説明:宮城県南三陸町で被災者の血圧を測定する苅尾さん(中央)(2011年5月撮影、自治医科大学提供)

高齢者や子どもは大規模地震などの発生時、心身への影響を受けやすい。「災害弱者」として周囲の支援や配慮が不可欠だが、本人にできる備えもある。被災時に高齢者に起こりやすい健康トラブルから確認していく。

6時間以上 睡眠心がけ

「ある高齢女性は、自らの被災体験を話すと気持ちが高ぶり、上の血圧が200ぐらいに上がった。ストレスが与えるダメージは計り知れない」。2011年の東日本大震災で被災した宮城県南三陸町などで医療支援をした自治医科大教授(循環器内科)の苅尾七臣(かずおみ)さんは、震災発生からほどない頃を振り返る。

 

高齢者は災害時、自宅が損壊するといった被災のストレスや、環境の変化、睡眠不足によって血圧が上昇する「災害高血圧」になりやすい。心筋梗塞(こうそく)や脳卒中を起こす恐れもある。

 

被災直後は恐怖感、時間が経過すると喪失感や将来への不安なども、高血圧の原因になり、生活が安定するまで起こり得る。カップ麺など塩分が多めの保存食ばかり食べることでも起きやすい。

 

「日中、意識的に体を動かすことで6時間以上の睡眠を心がけて」と苅尾さん。塩分摂取を控えることも大切だ。

 

避難所には血圧計が置いてあることが多い。日常的に活用したい。看護師などに測定されると高めになってしまう人は、自分でも測り、それでも上の血圧が160以上なら医師に相談する。

口の中 清潔に

災害時は口腔(こうくう)ケアがおろそかになりがちだ。一般社団法人「日本訪問歯科協会」(東京)の理事長、守口憲三さんは「歯磨きをしないと口の中で菌が増え、被災のストレスや不規則な生活などと相まって、体に悪影響を及ぼす。特に肺炎になりやすい高齢者は注意を」と話す。

 

水が十分にない場合は、歯磨き粉を使わずに歯ブラシで磨き、水を少量ずつ口に含んで、複数回に分けてゆすぐ。一度に多くの水を口に含むより効果的だという。

 

歯ブラシがない場合は、ぬらしたガーゼやタオルを指に巻いて歯の表面をこすり、汚れを取る。守口さんは「耳の真下のあごの付け根をマッサージし、唾液が出るよう促すことも有効。唾液には汚れを洗い流す自浄作用があります」と助言する。

自分の役割実践

生活の中で動く機会が減り、全身の機能が低下する「生活不活発病」にも注意したい。「『動かない』と人は病む 生活不活発病とは何か」の著者で、医師の大川弥生さんは「避難所で床に座ったり、横になったりすることが多い高齢者に起きやすい。寝たきりにもなりかねない」と警鐘を鳴らす。

 

東日本大震災から7か月後に大川さんが宮城県南三陸町と共同で全町調査したところ、要介護認定を受けていない元気な高齢者(65歳以上)の24%が歩行が難しくなったと回答。主な原因は「家の内外でやることがない」だった。

高齢者と周囲との関わりが予防につながる。つい「高齢者だからやってあげよう」と思いがちだが、避難所などで高齢者でもできる役割があれば、参加を促す。大川さんは「自分の役割を実践し、遠慮せずに散歩などを楽しみましょう」と訴える。

 

◆高齢者の健康3か条

▽血圧をチェック

▽口腔ケア怠らない

▽自分の役割を実践

 

(読売新聞 2020年11月12日掲載 「防災ニッポン 地震・災害弱者」上)

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