予知からの転換 地震防災は阪神大震災から始まった

当時名古屋大助教授だった山岡教授は、規模の小さな地震(前震)を大地震発生の前兆と捉える研究をしていたが、「震災で予知研究は社会が求める基準にはないと強く感じた」。国も震災後、発生確率などで評価する方針に改めた。

 

震災後、体に感じない微小な地震や強い揺れを捉える地震計、全地球測位システム(GPS)などが全国各地で整備され、より詳細に観測できるシステムが構築された。それでも、2011年の東日本大震災ではマグニチュード(M)9の地震を予知できず、日本地震学会は「確度の高い地震予測を行うのは非常に困難」との見解を示した。

 

阪神大震災以降の約25年間でM2以上の地震(日本列島周辺を含む)が計約65万回発生。うち家具の転倒などの危険性がある「震度5強」以上の地震は133回に上るが、予知に成功した事例はない。地震学会会長でもある山岡教授は「今は地震の確率評価など防災に役立つ研究が、地震学に求められている」と語る。

出回る有料情報に危惧

一方、関係学会や研究機関は近年、民間業者が独自の分析で予想した科学的根拠のない情報を有料で発信していることを危惧する。

2019年9月に京都市内で行われた地震学会の一般公開セミナーで、登壇した地震学者は「占いの類いを超えるものではないので、注意が必要だ」と集まった100人以上の市民に呼び掛けた。

 

また、地震予知の研究を続ける長尾年恭(としやす)・東海大教授は「データの解釈が誤っているなど信用度は低い。『この場所が危ない』と言い続けて、いずれ当たるのは科学ではない」と言い切る。

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