阪神大震災の教え 今できる備えのススメ

写真説明:防災用品は「ないと困る」という観点から考えよう(防災グッズを販売する東京都内の百貨店特設コーナーで)

6434人が犠牲になった阪神大震災の教訓から、地震後の避難生活で体調を崩すなどして命を落としてしまう「災害関連死」を防ぐため、事前の対策が有効とされる。今すぐにできることを始めてみよう。

災害で生き延びた後に亡くなっている

阪神大震災の犠牲者の14%超は、災害による直接死とは異なる原因で亡くなった。避難所で流行したインフルエンザなどから発症した肺炎が死因の人も多く、この震災以後、災害関連死という概念が認められるようになった。平成時代の災害では計4900人以上が認定された。

 

東日本大震災で2012年3月までに災害関連死と認定された人の約3割は、避難所などでの生活で生じた肉体・精神的疲労が原因とする復興庁の調査結果もある。避難生活による体力消耗やストレスを軽減するため、自分にとって何が大切かを考えた備えを心がけたい。

備蓄食品には好みの味を

大地震後でも自宅の損害が小さい場合などには、ライフラインが途絶した中で在宅避難を強いられることになる。物流機能が停止し、救援物資の到着が遅れることも見込まれることから、国の中央防災会議は1週間分の水や食料の備蓄が必要としているが、内閣府が2017年に行った調査では大地震に備えて食料や飲料水、日用品を準備している人は45・7%にとどまっている。

 

「災害時=非常食」と考えがちだが、乾パンやアルファ化米など非常食だけでは栄養素が偏り、食欲減退にもつながりかねない。農林水産省は19年3月に「災害時に備えた食品ストックガイド」を作り、栄養バランスも意識した備蓄を呼びかける。

まず第一に水。飲用と調理用を合わせ、1人1日3ℓが目安とされる。温かい食事を取るためには、カセットコンロとカセットボンベが必需品だ。皿を汚さないようにするラップや、材料を混ぜる時や加熱調理に便利なポリ袋などの雑貨も役立つ。

 

栄養不足を補う備えもしておきたい。たんぱく質はコンビーフ、サバなど肉や魚の缶詰、レトルトの牛丼の具などで摂取できる。過去の災害時には、野菜不足から便秘や口内炎に悩んだ人も多くいた。ジャガイモやタマネギなど長期保存の利くものを常備するほか、ワカメ、切り干し大根などの乾物、野菜ジュースやドライフルーツなどを活用すると良い。

 

保存方法、収納のコツ、備蓄食品をおいしく食べるためのレシピなどは「家庭備蓄ポータル」(農水省、https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/)のサイトで詳しく紹介されている。農水省の担当者は「災害時でも、おいしいものを食べれば気力が湧くはず。家族の好みの味を探し、楽しんで備えてほしい」と話す。

防災用品は「ないと困る」で選ぼう

阪神大震災の教訓を後世に伝えるために設立された「人と防災未来センター」(神戸市中央区)では震災や東日本大震災で被災した人たちの声を踏まえ、防災グッズのチェックリストをホームページで公開している。

 

特徴は、非常持ち出し袋に入れておく「1次の備え」、ライフラインが途絶えても数日間しのぐための「2次の備え」に加え、普段から持ち歩いておきたい「0次の備え」が明記されていることだ。災害はいつ、どこにいる時に起きるかわからない。最低限必要なものは数日分をポーチなどにまとめ、常に持ち歩いておきたい。

◆備えておきたい防災グッズ

※人と防災未来センター(http://www.dri.ne.jp/)の「減災グッズチェックリスト」を基に作成(下表も)

ただ、何からそろえればいいか、迷う人もいるだろう。「『自分にとって、生活にないと困るものは何か』という観点で考えてみて」と提案するのは、危機管理アドバイザーで危機管理教育研究所(東京都)代表の国崎信江さんだ。年齢や性別、職業、家族構成などによって、各自必要なものは異なるためだ。

「普段使い」をしながら、防災グッズにも代用できるものは結構ある。例えばスマートフォンは通話や通信だけでなく、災害時にはライトやラジオ、ホイッスルなどの代わりになるが、充電が切れると使えなくなるので、モバイルバッテリーが必須となる。

 

国崎さんはまた、毎月数千円程度から防災対策を行う「コツコツ防災」を勧める。家具の転倒防止など室内安全対策、持ち出し品や備蓄品の買い足しなど必要なものは何かを家庭内で定期的に話し合い、少しずつそろえていく。「負担なく継続していくことが大切です」と強調する。

 

(読売新聞 2020年1月7日掲載 編集センター・内田郁恵)

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