一人暮らしの危機管理(上)安心カード(連載)

写真説明:安心カードを入れたプラスチックケース(上)を冷蔵庫に保管する男性。冷蔵庫の扉にステッカーを貼り、救急隊員らにカードが中にあることを示す。

自分以外のだれでもわかる もしもの備え

一人暮らしの大きな不安が、突然の病気や災害だ。もしもの時に備えて、しっかり準備をしておきたい。

 

「私の意識がなかったら、まず冷蔵庫を開けてもらいます」

 

福岡市城南区で一人暮らしをしている男性(92)が、冷蔵庫の中から筒状のプラスチックケースを取り出した。

 

中に入っているのは「安心カード」。男性の氏名や生年月日、血液型、緊急連絡先、かかりつけ医などの情報が記入されている。万一、男性が家で倒れているのを救急隊などに発見された時、病歴の確認や親族への連絡がスムーズにできる仕組みだ。

 

男性は、妻が約20年前に他界。市内に住む長男が時々訪ねてくるが、新型コロナウイルスの影響で、外出の機会は減っている。「もし家で倒れても、安心カードがあれば心強い」と話す。

救急医療情報キットとして配布

安心カードの取り組みは、2008年に東京都港区が最初に始めた。冷蔵庫で保管するのは、どの家庭でも台所にあり、救急隊員が確実に見つけられるため。カードがあることを示すシールやステッカーを玄関ドアや冷蔵庫の扉に貼り、ケースには健康保険証やお薬手帳の写し、本人の写真なども入れておくと安心だ。現在は「救急医療情報キット」などの名称で住民に配布する自治体が増えている。

 

福岡市では09年、男性が住む城南区の堤校区が最初に取り組み、市全域に広がった。民生委員が単身世帯などにカードとケースを配布。年1回は訪問し、カード情報の更新を呼びかけている。堤校区民生委員の大神道子さんは「安心カードを、もしもの時の備えについて考えるきっかけにしてほしい」と話す。

連絡先などは持ち歩く

福岡市社会福祉協議会は、外出先での急病や事故に備える「緊急時連絡カード」の携行を推奨する。氏名、住所、電話番号、緊急連絡先、かかりつけ医、病歴などを記入するカードで、財布に入れるなどして常に携帯する。同市では市民に無料配布しているが、簡単に自作することもできる。

 

熊本県人吉市は、65歳以上の市民に「SOSキーホルダー」を配布。キーホルダーには市社協の電話番号と照会番号が記載されている。持ち主は事前に市社協に緊急連絡先やかかりつけ医などの情報を登録し、万一の時には市社協が情報提供する。鹿児島市でも、市民団体が同様の取り組みを行っている。

 

(読売新聞 2020年11月1日掲載)

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