3.11秘話 ディズニーランド「負傷者ゼロ」の実相

「ディズニーにいて良かった」

「園内は非常に落ち着いていた。当日ディズニーで被災して良かったとすら感じた」と話す。

シーの「メディテレーニアンハーバー」でショーを観賞していた時に震災に遭った山手浩史さん(29)は、レストランで夜を過ごした翌朝、キャストから心配そうな表情で「大丈夫でしたか」と声をかけられた。

「キャスト自らが被災者なのに、来園者を気遣ってくれて心が温まった」と振り返る。この対応に感銘を受けたこともあり、山手さんは2016年、オリエンタルランドに入社。偶然にもメディテレーニアンハーバーなどで行われるショーで来園者を誘導する担当を任された。現在は人事担当になったが、「震災時のようにいつまでも人々の記憶に残るエンターテインメントを提供したい」という思いを持ち続けている。

◆東京ディズニーリゾート 震災当時の対応

地盤改良や建物補強も

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでは、園内については、それぞれ建設時に深さ10~15mまで地盤を改良。締め固めた柱状の砂を一定間隔で地中に入れて地盤を引き締める「サンドコンパクションパイル工法」が採用されていた。

写真説明:アスファルトが陥没し、液状化したJR舞浜駅前(2011年3月12日、千葉県浦安市で)=来園者提供

さらに、東日本大震災の約1年前までに、照明や装飾品には落下防止のセーフティーワイヤを取り付け、柱を補強するなどの耐震化対策が取られていた。このためか、大震災では、園内の建物やアトラクションには大きな被害は出なかった

一方、地盤改良されていなかった園外の駐車場や周辺道路は激しく液状化した。来園していた福岡市の男性(34)によると、「道路はゆがみ、マンホールが70㎝くらい地上に飛び出していた。地震のすさまじさに驚いた」という。

震災後、両園では現場のキャストだけでなく、役員らについても「どのような場面でどんな指示を出せばよいか」を考える訓練を導入。災害時の判断力を磨いている。

 

(読売新聞 2021年1月11日掲載 社会部・波多江一郎)

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