【記者コラム】大災害「死者の声」を生かさなければ…

写真説明:津波の衝撃で折れ曲がったJR仙石線の線路(宮城県東松島市で2011年3月22日、筆者撮影)

26年前の1995年1月17日、神戸市のホテルに宿泊していた記者がいた。早朝の激しい揺れと衝撃で跳び起き、停電の中、1階ロビーに下りようとしたら、1階がつぶれてなくなっていた。元NHK記者で江戸川大教授の隈本邦彦さんの、阪神大震災での体験だ。

 

入社3年目だった私も震災から3週間後に神戸に入り、取材に加わった。文字通り焼け野原の街を見て、「こんな大災害は生きているうちに二度とないだろう」と人ごとのように思った。

 

それが大間違いだったと、16年後の2011年3月11日に気づく。仙台市に赴任中、東日本大震災を経験した。3分間揺られ続けて何もできず、沿岸部が津波に襲われたことすら同日夜まではっきりとは分からなかった。

 

1・17、3・11が近づくと災害報道が増える。東日本大震災後に宮城県石巻市、福島県郡山市と、被災地で計6年余り記者生活を送った私も、悲劇を繰り返さないためと思い、そこに関わってきた。だが、隈本さんから「過去の大災害の真の教訓を報道側は伝えていない。『死者の声』を聞くべきだ」と指摘された。災害で死に至った理由を一番知るのは犠牲者本人だからだ。

 

阪神大震災の犠牲者の8割以上は建物の倒壊による圧死や窒息死だ。防ぐには建物の耐震化が欠かせない。それは2016年の熊本地震の被害でも、逆説的に証明された。

 

東日本大震災では、津波が東北の沿岸部に押し寄せていることが全国に生中継されていながら、2万人近くが犠牲になった。現地は停電で映像を見ることができなかったのだ。仙台にいた私もそうだった。被災地に的確な災害情報を届けることが何より大切だ。

 

災害に遭うのは運が悪いからではない。世界中のマグニチュード6以上の地震の2割は日本周辺で起きる。地球温暖化で台風が強力になり豪雪も増加。誰もが被災者になり得る。

 

最近、防災士の資格を取った。災害時に市民のリーダー役を期待される。自宅を安全にして防災備品を準備すること。生き延びて周囲を支援すること。報道する側としても生活者としても「死者の声」を生かさなければ。

 

(読売新聞 2021年1月17日掲載 生活部・石塚人生)

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