津波で逃げるには避難場所の事前把握が重要

写真=和歌山県田辺市の文里地区には、津波からの避難の心構えなどを記した看板が掲示されている(提供写真)

2011年の東日本大震災は、津波防災の重要性を人々の心に焼き付けた。南海トラフ地震ではさらに甚大な被害の発生が危惧されており、備えの必要性は増すばかりだ。震災10年となる今年、津波から逃げる際のポイントを改めて確認していく。

ハザードマップや標識確認を

「地震だ! 5分で家を出ろ!」「避難をあきらめない!」――。

和歌山県田辺市の文里(もり)町内会は、津波発生時の避難の心構えなどを記した看板を掲示したり、ステッカーを各戸に配布したりして、住民の意識向上を図っている。太平洋に面した文里地区は、南海トラフ地震が発生した場合、約20分後に津波の第1波が襲うと想定されているためだ。町内会長の新宅初枝さん(61)は「命を守るには日頃から避難について考えることが大事」と気を引き締める。

多くの住民が参加する夏祭りでは、高台や津波避難タワーなど、地区内の緊急避難場所を記載した地図を掲示。自宅近くの避難場所の位置にシールを貼って意識づけてもらうとともに、他の避難場所も把握してもらう。「津波発生時に自宅にいるとは限らない。できるだけ多くの避難場所を知ってもらいたい」

「地震が起きてから津波が到達するまでの避難の時間は限られている。避難場所は事前に把握しておくことが不可欠」。東北大災害科学国際研究所所長の今村文彦さん(津波工学)は指摘する。

確認したいのが、自治体が作成するハザードマップだ。津波の恐れがある場合、浸水想定区域や、到達するまでの時間、想定される津波の高さなどとともに、緊急避難場所が記載されている。

津波からの避難では、遠くではなく、高い場所へ逃げることが重要なため、緊急避難場所は、高台や高い建物などが指定されている。複数箇所を把握し、避難経路も複数を確認しておきたい。経路沿いの塀が倒れるなどして通れなくなる恐れがあるからだ。

緊急避難場所については、街中にピクトグラム(図記号)を使った誘導標識が掲示されている場合もある。地理に詳しくない地域を訪れた場合、避難の参考になる。

図=津波避難に関する図記号や標識

※一般社団法人「日本標識工業会」の資料などを基に作成

川からの津波も要警戒

津波は海だけではなく、川からも襲う。東日本大震災でも、津波が川を遡上(そじょう)し、犠牲者が多く出た地域があった。

新潟大災害・復興科学研究所准教授の安田浩保さん(河川工学)は「海から離れているからといって安心はできない」とくぎを刺す。河川津波の浸水想定区域もハザードマップで確認し、避難場所や経路を複数把握しておきたい。

ただ、想定より高い津波が押し寄せたり、川の堤防が地震で崩れ、河川津波の被害地域が想定以上だったりする可能性は否定できない。予定していた避難場所では安全を確保できない恐れもある。

東北大の今村さんは「個人でも、自主防災組織や町内会でも、いざという時に避難に結び付くよう、思い込みを排し、色々な想定をしておくことが大事だ」と呼びかける。

◆避難場所3か条

▽ハザードマップで確認

▽複数の箇所を把握

▽河川津波も想定

 

(読売新聞 2021年1月21日掲載 連載「防災ニッポン 津波・逃げる」上)

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