津波で生き延びるには「実感」伴う避難訓練が重要

写真=ユーチューブで公開されている「おおいた防災VR」の一場面

天候・時間帯…条件変えて何度でも

津波警報などが出ても、避難の具体的なイメージがなければ、適切な行動は取れない。日頃から疑似体験しておくことが重要だ。

写真=「逃げトレ」の画面。津波が到達するまでの時間などが表示される(矢守研究室提供)

「15分以内に津波が来ます」「ここに津波が来るまであと12分56秒」――。

スマートフォン向けの津波避難訓練アプリ「逃げトレ」は、津波が想定される地域で避難先を設定して向かうと、自分の位置が画面の地図上に記され、津波到達までの残り時間が音声で流れたり、刻々と表示されたりする。避難開始の時間も早めたり遅らせたりして設定でき、無事に避難できたかの判定が出る。

訓練に臨場感を持たせようと、京都大防災研究所教授の矢守克也さんの研究室を中心に、内閣府などが公表する津波の想定データと、全地球測位システム(GPS)を活用して開発。避難訓練に取り入れる自治体もある。

矢守さんは「実際の避難では、状況によって避難開始が遅れたり、避難先を変更しなければならなかったりする。複数の避難のシナリオを試してほしい」と提案する。

避難経路についても色々な状況を想定しておきたい。

避難ルートや「恐ろしさ」の体験

NPO法人「兵庫県防災士会」の理事長、高橋実芳子さんは、ハザードマップを基に避難経路を歩き、激しい揺れでブロック塀や建物が倒れて道がふさがれたり、橋が崩壊して渡れなかったりする恐れがないか確認するよう勧める。昼と夜、雨天時など、条件を変えて歩くことも大切だ。「街灯がなくて真っ暗になる場所はないか、高齢者や子どもと一緒でも大丈夫かなど把握して」と助言する。

いざ避難となると、ちゅうちょしがちだ。危機を過小評価する心理が働かないよう、津波の恐ろしさを体感しておくのもいい。

大分県作成の動画「おおいた防災VR」は、南海トラフ地震で想定される津波が市街地や港を襲うイメージを見ることができ、昨年末から動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開。「津波・高潮ステーション」(大阪市)などの防災関連施設でも同様の体験ができる。

内閣府が2011年の東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸市町村の住民に12年に行った調査で、地震発生時に津波が来るか、来るかもしれないと考えた人は、津波防災に取り組んでいた地区では計65%で、そうでなかった地区は計48%。安全に避難できた人はそれぞれ41%、27%だった。防災活動が盛んな地区の方が避難につながりやすいことを示しており、地域で自主防災組織などの避難訓練があれば、積極的に参加したい。

図=東日本大震災発生時の津波到着への意識

※東北3県の沿岸市町村の住民への調査(内閣府、2012年)を基に作成

南海トラフ地震で最大14メートルの津波が想定される和歌山県みなべ町では、町が企画した訓練を自主防災組織がアレンジし、夜間にずらしたり、避難経路の一部が通行止めになったと仮定したりして実施した事例もある。町自主防災会連絡協議会長の西山博康さん(66)は話す。「本当に津波が来たとき、練習した以上のことはできない。危機感を持って備える必要がある」

◆避難訓練3か条

▽天候、時間など条件を変えて

▽経路の危険箇所も確認

▽動画などで恐ろしさ体感

 

(読売新聞 2021年1月23日掲載 連載「防災ニッポン 津波・逃げる」おわり 生活部・大郷秀爾、梶彩夏、生活教育部・岡本久美子が担当しました)

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