災害情報にAI・人工衛星活用 スマホで即時把握も

デマ拡散に注意を促すシステム

災害時には、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が情報伝達に大きな役割を果たす一方、デマ情報の拡散が問題となってきた。

情報通信研究機構は、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」に、矛盾する災害情報が投稿された場合に、注意を促すシステムを開発。専用のホームページで公開している。

システムでは、約400万の地名や災害時に使われる約2800万の言葉がコンピューターに蓄積されている。ツイッターに「石油コンビナートが炎上」と投稿されると、AIが「炎上」という単語に反応し、文脈を考慮しながら災害に関する情報であると判断する。

さらに、「有害物質が出ている」「そんなものは出ていない」などの矛盾する投稿を抽出すると、閲覧画面に「矛盾情報あり」と表示し、デマ情報の可能性を指摘する。

システムは15年に公開され、翌年の熊本地震や18年の大阪北部地震などで活用されている。同研究機構の大竹清敬上席研究員は「真偽の正確な判断はできないが、膨大な情報を判読するAIの利点を生かし、注意情報を発信できる」と話す。

◆主な災害とその前後に発達した情報通信技術

説明:情報通信白書などを基に作成

基地局なくてもスマホ同士でリレー、通信可能に

東日本大震災(2011年)では固定電話約190万回線が不通、携帯電話の基地局約2万9000か所が被災した。

写真説明:東日本大震災による津波で、横倒しになった携帯電話の基地局(2011年3月、NTTドコモ東北支社提供)

東北大のチームは13年、基地局がなくてもスマホから最大数十m離れた別のスマホに「バケツリレー」のように文章や画像を送信できるシステム「スマホde(で)リレー」を開発した。

スマホで専用アプリを起動させると、Wi-Fi(ワイファイ)やブルートゥースの無線通信機能が働き、別の場所でアプリを起動させたスマホと通信ができる仕組みだ。

高知市は19年から避難情報を収集するために導入。東北大の西山大樹教授(通信方式)は「基地局が被災しても必要な情報を数珠つなぎで伝えられる。通信網が途絶えた時の切り札になるだろう」と期待する。

また、内閣府はこのシステムで収集した避難者の安否情報を、人工衛星を使って被災地外の災害対応機関に送るシステムを考案。1月以降、和歌山県紀美野町など24市町村で実証実験を始める。

(読売新聞 2021年1月15日掲載 科学医療部・長尾尚実、村上和史)

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS