トッド氏が語る震災10年「復興と人口減抑制は不可分」

「フクシマ」と原発維持について

無論、廃炉や除染を含め、日本は「フクシマ」と共にあり続けなければなりません。唯一の被爆国にとって複雑で重い課題でしょう。

ただ外から見ると、日本は炉心溶融を起こした重大事故を抑え込んだ。対応に成功したと私は考えます。

そして原子力産業を維持する選択をした。地震に揺れ、津波に襲われる列島で原発を続けることは危険を伴います。それでも継続を選んだのはエネルギー自立が日本にとって至上命令だからです。突き詰めれば、自立を優先したのです。意義ある決断です。

とはいえ、日本の最大の問題は人口減少です。

助言が二つあります

私見では、日本はようやく移民受け入れに転じた。2019年施行の改正出入国管理・難民認定法で受け入れにカジを切った。既に流入は進んでいました。年間の流入人口から流出人口を引いた「純移動」は17年、約36万人で、フランスの2倍でした。大半が移民のはずです。

労働力不足に悩む経営者らは流入を支持している。移民は増え続けるでしょう。

人口危機は長い潜行の後、顕在化し、制御不能に陥る。世界一の高齢化社会の日本にとって移民は必須です。

助言が二つあります。

日本人の安寧は「日本人どうしでいること」です。異文化を尊重し、共生をめざす多文化主義は不向きです。移民を同化させる不断の努力が必要になります。

ただ移民受け入れだけでは不十分、やはり子供が多く生まれる必要がある。移民の子らが日本の子らと混じり合い、日本人らしくなるのが理想です。喫緊の課題は低い出生率を引き上げる抜本策を見いだすこと。女性の地位を巡る意識の転換が不可欠です。

3・11を機に人口減少が一層加速した被災地は日本の縮図です。日本の人口減少を制御できなければ、真の復興も成就できません。

エマニュエル・トッド氏 <プロフィル> Emmanuel Todd フランスの歴史人口学者。家族構造や人口統計の分析に基づく文明批評で有名。主著は「家族システムの起源」「帝国以後」。69歳。

(読売新聞 2021年2月24日掲載 編集委員・鶴原徹也)

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