復興構想会議議長だった五百旗頭真氏の震災10年

被災地の次世代に負担させたくない

1995年の阪神大震災では、壊れた街を元に戻す「復旧」にかかる経費は国が負担しましたが、街をより良くするための「創造的復興」のための費用は自治体の負担となり、兵庫県や神戸市などは多額の負債を抱えることになってしまいました。東日本大震災では被害がより広範囲で、小規模自治体が多く被災しました。このつけを子どもや孫たちの世代に回すことはできないという強い思いを持っていました。

会議では大変な状況下で、国民に負担を強いる増税に否定的な意見もありましたが、議論が進み、なすべき復興事業が山積していくとともに、増税反対の声は下火になっていきました。被災地の復興のためなら、増税も受け入れるという世論の高まりも影響したのだと思います。

写真説明:復興構想会議議長として宮城県の石巻漁港を視察に訪れた五百旗頭氏(2011年5月4日)

全額国費負担は正しかったのか

集団移転事業に伴う土地の造成や道路整備にかかる経費を国が全額負担したことについては疑念が残ります。元々、事務局には「90~95%は国費で見てほしい」などと伝えていたのですが、それを上回る「100%国費で負担する」との報告を受けた時は「モラルハザード(倫理の欠如)を起こさないか」と、思わず聞き返してしまいました。全額国費負担にしてしまうと、地元自治体が事業を引き締めるブレーキを踏む責任を感じずに、本来は必要のない事業にまで手をつけてしまうのではないかとの不安があったからです。

あれから10年、被災自治体は不要な過大事業に陥らないよう留意したと聞きます。にもかかわらず、結果的に高台にたくさんの公共施設が建つ一方で、住宅地は空き地が目立ちます。わずかでも自己負担分があれば、状況は変わっていたのではないでしょうか。

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