天気予報・自治体も注目する民間の気象サービス

各地の利用者から届くリアルな情報

雨の予報精度が9割を超える同社の武器は「ウェザーリポーター」という仕組みだ。スマートフォンのアプリを通じ、各地の利用者から空模様の写真や動画などが1日平均約18万通届く。〈道路が冠水〉〈橋が流された〉。九州で豪雨被害が起きた2020年7月4日は、熊本県の被災地などから900通超が届いた。三浦さんは「現場で何が起きているのか細かく把握できる」と話す。

写真説明:大雨のため崩落した球磨川第一橋梁(2020年7月5日、熊本県八代市で)

一般財団法人「日本気象協会」(東京)も100超の自治体に気象情報を提供するほか、一般向けのアプリを設ける。豪雨で八女市の自宅が床上浸水した地元区長の男性もアプリで雲の動きなどを確認して消防小屋からサイレンを鳴らし、高齢者に用心を促すこともある。「雨雲レーダーで雲の動きを見ている。自分がいるところの雲の様子がピンポイントで分かるので役立つ」と語る。

同協会は線状降水帯の半日前予測を目指す国の実証実験にも参加する。福岡大などが長崎、鹿児島県に大気中の水蒸気量を測る観測機器を設けた。線状降水帯発生の恐れがある場合、2017年の九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市や同県東峰村など9自治体にメールで伝える。同協会は「研究機関と自治体をつなぐ役割を果たしたい」とする。

国土交通省が官民連携を進める提言

国も民間との連携の動きを強める。国土交通省の気象分科会は2020年度、官民の情報交換や人材交流の促進を柱とする提言をまとめる方向だ(※)。同分科会長の新野宏・東京大名誉教授(気象学)は「広く一般に防災情報を出す気象庁と、これを補い自治体や企業のニーズに応じてきめ細かな情報を出す民間とが、互いに連携し、わかりやすく防災情報を発信することが減災につながる」と指摘する。

(読売新聞 2020年12月9日掲載 連載「減災力 予報の現場」④ ※いずれも肩書は当時)

(※)この提言は2020年12月23日に発表された。
http://www.jma.go.jp/jma/press/2012/23b/bunkakai_rep.html

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