天気予報・気象庁が国交省と一緒に避難を呼びかける

写真説明:台風10号の接近時に、合同記者会見を開く福岡管区気象台と九州地方整備局の担当者(2020年9月5日、福岡市内で)

管区気象台と地方整備局が合同で記者会見したわけ

「非常に危険な台風が近づいている」「命を守る行動を」――。

過去最強クラスに発達すると予測された2020年9月の台風10号。福岡管区気象台と、国土交通省の出先機関である九州地方整備局は、最接近の3日前から九州だけで計6回も合同の記者会見を開いた。20万人超が避難所に向かったほか、各地で建物の窓ガラスに養生テープが貼られ、ホテルへの避難も相次ぐなど、気象庁の呼びかけは住民の防災意識を確実に高めた。

写真説明:台風10号の接近で住民が次々と身を寄せた長崎県五島市内の避難所(2020年9月6日)

豪雨や台風の来襲が予想される際、九州では福岡管区気象台と九地整が合同で記者会見を開く仕組みがある。予報を担う気象台と、河川の水位などを観測する九地整が同時に情報を発信し、住民に強く避難を促すためだ。

住民が逃げ遅れて死者・行方不明者42人が出た2017年の九州北部豪雨を教訓として2019年6月に始まり、全国に広がった。

2020年の九州豪雨では後手に回った

しかし、死者・行方不明者が79人に上った2020年7月の九州豪雨では、被害が出る当日まで合同会見が行われなかった。

「そこまでの大雨は降らない。会見は見送ります」。豪雨前日の7月3日夕、福岡管区気象台の職員は九地整に電話で伝えた。気象台は雨雲の動きなどから、4日ではなく6日以降の大雨を想定した。ところが、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」の発生でその予測は覆された。

降り続く雨で熊本県南部を流れる球磨川の水位は急上昇し、4日未明に氾濫危険水位を超えた。合同会見が始まったのは、熊本、鹿児島両県に大雨特別警報が出てから約1時間後の4日午前5時45分だった。

注意を呼び掛けた3分後に再びマイクを握った

会見で九地整の河川調査官は「球磨川は氾濫危険水位を突破し、氾濫が迫っている」と説明した後、額の汗を拭った。いったん置いたマイクを急きょ握ったのは、わずか3分後。「水があふれているという情報が入ってきた」。入所者14人が亡くなった特別養護老人ホーム「千寿園」の近くだった。

写真説明:球磨川が氾濫し、冠水した熊本県人吉市の市街地(2020年7月4日)

福岡管区気象台の防災調整官は「梅雨末期の積乱雲の動きを予測することは難しく、今の精度では事前に会見を開けないこともある」と苦しい胸中を語る。

避難呼びかけが「もっと早く、強かった」なら…

被災地からは厳しい声も上がった。豪雨で自宅が浸水した熊本県人吉市の70歳代男性は「気象庁などがもっと早く、強く避難を呼びかけてくれたら助かる命もあったはず」と沈痛な表情を見せる。町内では顔見知りの男性が犠牲になった。

台風に比べて予測が困難な集中豪雨でいかに避難を呼びかけるか。課題は山積している。

川の洪水危険度の情報提供も一括で

こうした中、気象庁と国交省は連携し、新たな情報発信を始める。

川の洪水危険度の情報提供は、国交省が大河川109水系、気象庁が約2万の中小河川をそれぞれのサイトで公開してきたが、2021年度中に統合する。

住民が早く逃げることができるように

いずれも水位計や雨量予測を基に川の氾濫リスクを5段階で示す。今後は一つの地図で大中小の川の情報を一覧できるようにし、自治体や住民に活用を促す。

「我々の目標は住民に早く逃げてもらうこと。水位観測と雨量予測というそれぞれの強みを生かし、今後も連携していきたい」。気象庁業務課の調査官は強調する。

(読売新聞 2020年12月5日掲載 連載「減災力 予報の現場」② ※いずれも肩書は当時)

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