スマホで避難所の「密」確認 防災と感染防止の切り札に

80自治体の約6000避難所をカバー

同社によると、2018年の西日本豪雨や台風10号で定員超過の避難所が相次いだのを受け、利用協定の締結を望む自治体が増えているという。2021年3月末現在で、宮崎県日南市、兵庫県明石市、長崎市、大分県など約80自治体と協定を結び、登録避難所は計約6000か所に上る。

2020年8月に導入した日南市は台風10号の時に初めて活用した。約30の避難所に過去最多の約1500人が避難し、11の避難所の混雑情報を発信した。台風が接近した昨年9月6日だけで約7000件の閲覧があった。1避難所当たりの定員を3分の2程度に減らしたが、満員は2か所にとどまった。市外からの閲覧も多く、市は「遠くの家族が情報を伝え、避難につながった可能性もある」と語る。

台風10号で260か所中43か所が満員となった長崎市は2021年1月に協定を締結。台風時は、避難所からあふれた住民を別の避難所に誘導したが、移動先が満員で入れないこともあった。同市は「再発防止のため、サービスを活用したい」とする。大分県は全18市町村で使えるようにした。

バカンは「コロナ禍の中、避難所の混雑情報を知ることが感染防止にもつながる。サービスを利用し、避難をためらったり、逃げ遅れたりする人を減らしたい」としている。

避難所数増7割でも4割定員超過

2020年の台風10号について、内閣府が九州・山口の全252市町村に行った調査では、市町村の約7割が「3密」回避のため避難所を増やしたが、約4割で定員超過が確認された。

国は宿泊施設も活用した避難所の分散化を自治体に勧めている。宮崎県串間市は、土砂災害区域などに住む高齢者や障害者ら「要配慮者」を対象に災害時に宿泊施設を紹介する。愛媛県宇和島市も、要配慮者が市内の宿泊施設に避難した場合に宿泊費の一部を補助する制度を設けた。

兵庫県立大の室崎益輝教授(防災計画学)は「自治体は十分な数の避難所を開設するとともに、梅雨に向けて混雑回避の手立てに知恵を絞るべきだ。混雑情報の提供は無駄のない避難につながる」と指摘する。

(読売新聞 2021年4月4日掲載 宮崎支局・梅野健吾)

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