熊本豪雨で水没・再建した施設で警察犬の訓練体験リポート

豪雨で自宅兼第1訓練所が水没

2020年の豪雨では、自宅兼第1訓練所が水没した。約1・2km離れた高台の第2訓練所は被災を免れたことから、ここの倉庫を仮犬舎に改装し、訓練用の広場も整備した。資金は、指導士有志がクラウドファンディングで集めるなどした義援金を充てた。

写真説明:再建した人吉警察犬訓練所の仮犬舎前で警察犬たちと触れ合う開田宏さん(熊本県相良村で)

一時は廃業も考えたという開田さんは「支援を受けた恩は決して忘れない。現場で活躍する犬を多く育て、恩返ししたい」と語る。

タンクと一緒に捜索訓練

締めくくりに捜索訓練を体験した。不明者役の開田さんが裏手の竹林に潜む。私の「サーチ(捜せ)」の掛け声に、今度はタンクが素早く反応し、竹林へまっしぐらに駆け出した(=写真、訓練所提供)。

体力と走力には自信があったが、木の枝や崖があり、うまく追いつけない。1分もたたないうちに、潜む開田さんを見つけたタンクがほえる。そこは崖の上。結局、たどり着けなかった。開田さんは「実際の現場はこんなもんじゃない。常に危険と隣り合わせなんですよ」と語った。

災害現場で被災者を捜索するには

災害現場の被災者捜索の場面では、二次災害の恐れもあって、指導士の身動きが取りにくい。そこで、犬に背負わせた無線機を通じ、嗅覚に影響する風向きを読みながら、「右」「左」と遠隔指示を出す。

「離れていても無線の声を信じて進む。現場で能力を最大限発揮するには、『人犬一体』が大切です」。開田さんはそう言い切った。

警察犬との信頼関係構築に、日頃のたゆまぬ訓練が大切であることを学んだ。

(読売新聞 2021年4月18日掲載 熊本支局・岡林嵩介)

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