専門家に聞く噴火対策
今回のハザードマップをまとめた元東京大地震研究所長の藤井敏嗣(としつぐ)・山梨県富士山科学研究所長(=写真)に、研究の現状や噴火対策のあり方などを聞いた。
予知はなぜ難しいのか
「富士山は日本の象徴だから、詳しく解明できている」と思われがちだが、実は多くの謎が残されている。なぜ日本一高い山になったのかよく分かっておらず、噴火予知も非常に難しい。
しかし、観測網の整備が進み、噴火が切迫した段階なら兆候を捉えられる可能性が出てきた。マグマが地下10kmまで上ってくれば、山体が膨らむ現象などが観測できるだろう。
とはいえ、観測できたとしても、いつ噴火するのか、しないのか、噴火してもいつ終わるのかは分からない。さらに、富士山は「噴火のデパート」と呼ばれるほどいろんな噴火が起きるため、何が起きるのかも予測できない。
リスク回避のためにできること
気象庁は危険度を示す5段階の「噴火警戒レベル」を発表しているが、現在の観測技術では不確実な予測にならざるをえない。それでも住民は自らの判断でリスクを回避する必要がある。
そこで役立つのがハザードマップだ。溶岩流の到達可能範囲が広いのは、どこで噴火が起きても対応できるようにするためで、実際には一度に全域が被災するわけではない。252パターンの溶岩の流れ方を示したマップも用意したので、山梨県などのホームページで自宅や勤め先への影響を確認してほしい。
(読売新聞 2021年5月23日掲載 科学部・松田晋一郎、中村直人)
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